FODオリジナルドラマ『REAL 恋愛殺人捜査班』に塩野瑛久が出演する。今作は野村周平さんとの初タッグ&W主演となるバディものの刑事ドラマで、塩野は“容姿端麗な恋愛マスター”という「自分とは真逆」のキャラクター・夢川幹也を熱演。しかも物語は実話ベースということでリアルとフィクションのバランスにも苦戦したとのこと。そんな今作の魅力や野村さんとの関係性、さらに大河ドラマ『光る君へ』で新境地を開いた現在の心境などを語ってくれた。
おっしゃるとおりふたりが合わさって、初めて真実にたどりつくみたいな、一緒になってようやく事件を解決できる感じがちょうどいいのかなと思います。最初、企画書を読んだ段階ではバディものということで、もうちょっと軽いものを想像していたのですが、蓋を開けてみたら、実際の事件を元にしているということもあり、筋書きもしっかりしていて。台本も刑事モノらしく出てくる人の名前や捜査の説明をするセリフ量も多く、思っていたより硬派な印象でした。
さまざまな容疑者が登場しますが、皆さんわりとシリアスなところを抑えてくるし、僕らもはっちゃけるような感じではないので、(ドラマの)基本的なカラーはロートーンです。でも、それだけだと本当に硬いだけの刑事ドラマになってしまうので、夢川のキャラクターによってちょっと崩していけば抑揚がつくかなと考えて挑みました。捜査班は周平くんと僕のふたりだけなので、キャラクター性を出したほうがおもしろいかなと思いました。
だからこそふたりのキャラクター性に注視し、ビジュアルも違いが出るように、でも、それが変に見えないよう両者のバランスはすごく気をつけました。ただ、周平くんがロン毛なのはちょっと意外でした(笑)。
本当はロン毛を垂らしたままにしてちょっと気持ち悪く見せようという話もあったんです。でも、やっぱり少しシュッとさせたいということで、ひとつに縛ったあの髪型になったみたいです。ただのまじめキャラにしたくなかったんだと思います。
はい、僕ら本来のキャラはドラマとは逆なんです。どちらかというと僕がまじめで堅物なタイプ、周平くんはゆるい感じですから。周平くんとは今回がほぼ初共演です。
(笑) 今回はセリフ量が多かったですし、撮影期間もコンパクトだったので、とにかくお互いに必死だったんです。でも夢川はちょっと砕けている一面があるから、アドリブ的にカット尻に何か入れなきゃ的な空気があって。僕も余裕がないからなかなか上手くいかず、そういうときに周平くんが「今のアドリブは○点だな」とイジってきて、結構恥ずかしかったです(笑)。
たぶんそうだと思います。周平くんはみんなが切迫してくると場を和やかにしてくれたり、スタッフさんとコミュニケーションをとって盛り上げてくれたので、すごくありがたかった。それに裏表がないというか。すごく素直な人だなっていうのは見ていてわかったので接しやすかったですし、無理せず一緒にいられました。
特別に何か話し合ったことはなくて、お互いその場で生まれたものに反応して、やりながら空気感ができていった感じです。僕は元々、共演者の方に「ああしよう」「こうしよう」と言わないほうなのですが、周平くんも決め込んでいくのはたぶん嫌がるだろうなって勝手に思って。ふたりとも感覚でやっていた部分が多かった気がします。
僕も衣装合わせの段階で監督に質問したんですけど、明確なものは描かれていないんです。彼は愛を信じていない人で、それは過去の経験によって作り出された恋愛観であり、でも信じたいって気持ちもどこかにある。そこが夢川の肝だと思っていました。実際、言葉に力が入る瞬間を作ったりもしたのですが、その理由を具体的に描く場面はないですし、夢川が感情的になるセリフやシーンも少ないから、どのポイントでどんなテンションで“裏”の部分を垣間見せるか。その塩梅が難しくて、自分の中で彼の背景をイメージし、深掘りしていくという作り方でした。
そうですね。逆に何も考えないで突っ走るようなシンプルな役は苦手かもしれない。どこかに何かを含んでいるような役が多いし、僕自身の性格もそうなので、夢川もキャラクター自体は演じやすい役でした。ただそこに捜査の芝居が乗っかってくると感情の入れどころが難しかったかな、と。夢川の素を出す部分がほぼないし、彼の軽い部分も見せなきゃいけないから、裏と表のバランスは常に模索していました。
そう言っていただけるのは役者冥利に尽きます。だからこそ「塩野瑛久」として覚えられにくいという弱点もあって……。作品ごとに役柄が違いすぎるので、同一人物とわからない方も多いのかなという印象です。ただ最近は「あのドラマの、あの役の人だったんですね」と発見してもらえることがちょっとずつ増えて、ありがたいなと思っています。
やっぱり実話がベースというところは注目点のひとつで、意外な犯人、意外な展開が待っているところが見どころです。あと、主人公ふたりのキャラクターが合わさることによって生まれる化学反応のおもしろさ。お互い足りないところがあり反発もしますけど、根本はつながっていて、補い合いながら地道に捜査が進んでいく。その過程にリアリティがあるし、実話を元にしているから予想外な展開はあっても「そうはならんやろ!」みたいな、ツッコミどころがないんです。
その辺りは緻密に作られています。逆にいうと犯人がわかっても全然スッキリしないところもあって。完全なフィクションなら「そっちだったかぁ」とか、どんでん返し的なオチをつけられるけど、いい意味でそういう起伏がない。でもそれもまた事実ベースだからこその“REAL”なんですよね。ドラマでは大きく分けて3つの事件が起きるのですが、事件の真相だけじゃなく、恋愛によって引き起こされる動機がすごく重要なのかなと。恋愛って人間のいちばん生身なところや闇、要は愛の裏返しの憎悪が出てしまうときがあるじゃないですか。そういった人間味のある部分に注目してもらえると、人間ドラマとして地に足の着いた状態で観ていただけるかなと思います。
作品を観てくれる人の反応。それに尽きると思います。僕らの仕事って作品を観てもらわない限り意味がないし、反応をもらって「良かったよ」って言ってもらえることがやりがいになるんです。特にドラマは舞台と違って演じている最中は反応がわからなくてしんどかったりもするので、放送後に視聴者さんの声を聞くと「頑張って良かった」って思える。そこがモチベーションであり日々の癒しでもあるので、それ以外に必要なモノや人は特にないかもしれません。
だから仕事以外の趣味を持っている人がうらやましいです。周平くんはバイクが息抜きになっているみたいだけど、僕の場合は結局、仕事が一番になってしまう。でも仕事以外にこだわりがないわけじゃなくて、こだわりがありすぎるがゆえに余計なものを排除しまくっています。身の回りのモノに対しても「これが欲しい」ってハッキリしすぎているから、あまり目移りしないんです。
すごくいい言い方をしてもらいましたが(笑)、イメージとしてはそんな感じかもしれないです。
DRAMA information
『REAL 恋愛殺人捜査班』
7月5日(金) 20時 1話、2話配信スタート
(1話無料)以降毎週金曜日20時最新話配信
※配信日時は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
出演/野村周平、塩野瑛久 ほか
脚本/諸橋隼人、相馬光
プロデューサー/池田綾子(フジテレビ情報制作センター)、古谷忠之(AIR-X)
プロデュース/荒木勲(フジテレビ情報企画開発部)
演出/川野浩司、加賀佐知子
総合演出/長江俊和
制作協力/NEBULA
制作著作/フジテレビ
https://www.fujitv.co.jp/drama_real/
photography_彦坂栄治(まきうらオフィス)
styling_石川英治(tablerockstudio)
hair&make_KOHEY(HAKU)
text_若松正子
『REAL恋愛殺人捜査班』は実際に起きた有名な殺人事件をモチーフにしたドラマ。1話と2話を先に拝見しましたが、ストーリーはもちろん刑事役の塩野さんと野村周平さんのバディ感がすごく良かったです。どちらも、それぞれ欠落している部分があって、万能じゃないところがそれこそリアルだなと。
おっしゃるとおりふたりが合わさって、初めて真実にたどりつくみたいな、一緒になってようやく事件を解決できる感じがちょうどいいのかなと思います。最初、企画書を読んだ段階ではバディものということで、もうちょっと軽いものを想像していたのですが、蓋を開けてみたら、実際の事件を元にしているということもあり、筋書きもしっかりしていて。台本も刑事モノらしく出てくる人の名前や捜査の説明をするセリフ量も多く、思っていたより硬派な印象でした。
“恋愛殺人捜査班”って設定自体はポップですけど、それをリアルに落とし込むバランスが絶妙ですよね。
さまざまな容疑者が登場しますが、皆さんわりとシリアスなところを抑えてくるし、僕らもはっちゃけるような感じではないので、(ドラマの)基本的なカラーはロートーンです。でも、それだけだと本当に硬いだけの刑事ドラマになってしまうので、夢川のキャラクターによってちょっと崩していけば抑揚がつくかなと考えて挑みました。捜査班は周平くんと僕のふたりだけなので、キャラクター性を出したほうがおもしろいかなと思いました。
塩野さん演じる夢川幹也は恋愛マスターで容姿端麗な刑事。一方、野村さん演じる大儀見壮真は、恋愛とは無縁のまじめな刑事……と、真逆の凸凹コンビで住み分けがはっきりしていますね。
だからこそふたりのキャラクター性に注視し、ビジュアルも違いが出るように、でも、それが変に見えないよう両者のバランスはすごく気をつけました。ただ、周平くんがロン毛なのはちょっと意外でした(笑)。
思いました! 堅物キャラだけど何気におしゃれで(笑)。
本当はロン毛を垂らしたままにしてちょっと気持ち悪く見せようという話もあったんです。でも、やっぱり少しシュッとさせたいということで、ひとつに縛ったあの髪型になったみたいです。ただのまじめキャラにしたくなかったんだと思います。
野村さんはどちらかというと、ラフなイメージがありますよね。
はい、僕ら本来のキャラはドラマとは逆なんです。どちらかというと僕がまじめで堅物なタイプ、周平くんはゆるい感じですから。周平くんとは今回がほぼ初共演です。
でも、資料によると、撮影中は野村さんが塩野さんのことをイジっていたとか。
(笑) 今回はセリフ量が多かったですし、撮影期間もコンパクトだったので、とにかくお互いに必死だったんです。でも夢川はちょっと砕けている一面があるから、アドリブ的にカット尻に何か入れなきゃ的な空気があって。僕も余裕がないからなかなか上手くいかず、そういうときに周平くんが「今のアドリブは○点だな」とイジってきて、結構恥ずかしかったです(笑)。
野村さんなりに塩野さんをリラックスさせようとしたんですかね?
たぶんそうだと思います。周平くんはみんなが切迫してくると場を和やかにしてくれたり、スタッフさんとコミュニケーションをとって盛り上げてくれたので、すごくありがたかった。それに裏表がないというか。すごく素直な人だなっていうのは見ていてわかったので接しやすかったですし、無理せず一緒にいられました。
ドラマ内のおふたりのやりとりも自然でしたが、ナチュラルな空気感を出すために話し合ったりしたんですか?
特別に何か話し合ったことはなくて、お互いその場で生まれたものに反応して、やりながら空気感ができていった感じです。僕は元々、共演者の方に「ああしよう」「こうしよう」と言わないほうなのですが、周平くんも決め込んでいくのはたぶん嫌がるだろうなって勝手に思って。ふたりとも感覚でやっていた部分が多かった気がします。
夢川の人物像はどのように捉えましたか? 軽そうに見せつつ、実は何か抱えていそうな“裏”を感じたのですが。
僕も衣装合わせの段階で監督に質問したんですけど、明確なものは描かれていないんです。彼は愛を信じていない人で、それは過去の経験によって作り出された恋愛観であり、でも信じたいって気持ちもどこかにある。そこが夢川の肝だと思っていました。実際、言葉に力が入る瞬間を作ったりもしたのですが、その理由を具体的に描く場面はないですし、夢川が感情的になるセリフやシーンも少ないから、どのポイントでどんなテンションで“裏”の部分を垣間見せるか。その塩梅が難しくて、自分の中で彼の背景をイメージし、深掘りしていくという作り方でした。
塩野さんは、そういう“ひと筋縄ではいかない”役柄が多いかも。
そうですね。逆に何も考えないで突っ走るようなシンプルな役は苦手かもしれない。どこかに何かを含んでいるような役が多いし、僕自身の性格もそうなので、夢川もキャラクター自体は演じやすい役でした。ただそこに捜査の芝居が乗っかってくると感情の入れどころが難しかったかな、と。夢川の素を出す部分がほぼないし、彼の軽い部分も見せなきゃいけないから、裏と表のバランスは常に模索していました。
そういうお芝居の話を聞いていると、塩野さんが「カメレオン俳優」と言われる理由がよくわかります。
そう言っていただけるのは役者冥利に尽きます。だからこそ「塩野瑛久」として覚えられにくいという弱点もあって……。作品ごとに役柄が違いすぎるので、同一人物とわからない方も多いのかなという印象です。ただ最近は「あのドラマの、あの役の人だったんですね」と発見してもらえることがちょっとずつ増えて、ありがたいなと思っています。
今作も鮮烈な印象を残しそうな役柄であり、作品だと思いますが、特に注目してほしいところは?
やっぱり実話がベースというところは注目点のひとつで、意外な犯人、意外な展開が待っているところが見どころです。あと、主人公ふたりのキャラクターが合わさることによって生まれる化学反応のおもしろさ。お互い足りないところがあり反発もしますけど、根本はつながっていて、補い合いながら地道に捜査が進んでいく。その過程にリアリティがあるし、実話を元にしているから予想外な展開はあっても「そうはならんやろ!」みたいな、ツッコミどころがないんです。
確かに、変な匂わせや思わせぶりのミスリードがないところに、実話を扱う制作側の誠実さと自信を感じました。「事実は小説より奇なり」じゃないですけど、小細工なしでも本当に犯人がわからないし、十分インパクトがあるんですよね。
その辺りは緻密に作られています。逆にいうと犯人がわかっても全然スッキリしないところもあって。完全なフィクションなら「そっちだったかぁ」とか、どんでん返し的なオチをつけられるけど、いい意味でそういう起伏がない。でもそれもまた事実ベースだからこその“REAL”なんですよね。ドラマでは大きく分けて3つの事件が起きるのですが、事件の真相だけじゃなく、恋愛によって引き起こされる動機がすごく重要なのかなと。恋愛って人間のいちばん生身なところや闇、要は愛の裏返しの憎悪が出てしまうときがあるじゃないですか。そういった人間味のある部分に注目してもらえると、人間ドラマとして地に足の着いた状態で観ていただけるかなと思います。
期待しています。ちなみに塩野さんの中で人でもモノでも、生きていくうえで欠かせない“相棒”的な存在ってありますか?
作品を観てくれる人の反応。それに尽きると思います。僕らの仕事って作品を観てもらわない限り意味がないし、反応をもらって「良かったよ」って言ってもらえることがやりがいになるんです。特にドラマは舞台と違って演じている最中は反応がわからなくてしんどかったりもするので、放送後に視聴者さんの声を聞くと「頑張って良かった」って思える。そこがモチベーションであり日々の癒しでもあるので、それ以外に必要なモノや人は特にないかもしれません。
癒しが「視聴者の反応」って欲がなさすぎです(笑)。
だから仕事以外の趣味を持っている人がうらやましいです。周平くんはバイクが息抜きになっているみたいだけど、僕の場合は結局、仕事が一番になってしまう。でも仕事以外にこだわりがないわけじゃなくて、こだわりがありすぎるがゆえに余計なものを排除しまくっています。身の回りのモノに対しても「これが欲しい」ってハッキリしすぎているから、あまり目移りしないんです。
本物志向ってことですよね。枝葉はいらないというか。
すごくいい言い方をしてもらいましたが(笑)、イメージとしてはそんな感じかもしれないです。
DRAMA information
『REAL 恋愛殺人捜査班』
7月5日(金) 20時 1話、2話配信スタート
(1話無料)以降毎週金曜日20時最新話配信
※配信日時は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
出演/野村周平、塩野瑛久 ほか
脚本/諸橋隼人、相馬光
プロデューサー/池田綾子(フジテレビ情報制作センター)、古谷忠之(AIR-X)
プロデュース/荒木勲(フジテレビ情報企画開発部)
演出/川野浩司、加賀佐知子
総合演出/長江俊和
制作協力/NEBULA
制作著作/フジテレビ
https://www.fujitv.co.jp/drama_real/
photography_彦坂栄治(まきうらオフィス)
styling_石川英治(tablerockstudio)
hair&make_KOHEY(HAKU)
text_若松正子
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