2024年2月の三重公演からスタートした、FANTASTICS初となるアリーナツアー『FANTASTICS LIVE TOUR 2024 “INTERSTELLATIC FANTASTIC”』。デビュー時からたびたび“宇宙”をテーマにしてきた彼ら。“Intersteller”は星の間という意味を持ち、“ファンと一緒に新しい星を見つけていき、かなえていく”という想いを込めたこのツアーは、全公演の演出を変えるというかなり挑戦的なもの。今回は、千葉・幕張メッセで開催されるファイナル公演(7月14日、15日)を前に、東京・有明アリーナで4月に行われた東京公演の模様を振り返る。
開演前から、客席にはこの公演のフラッグを持ったFANTAROが期待で胸を膨らましていることが伝わってくる。メインステージのビジョンにカウントダウンの映像が映し出されると一気に歓声が上がり、全員でカウントダウンをし終わった瞬間、ステージには発光するかのようなイエローの衣装に身を包み、口元にマスクをしたパフォーマーの世界、佐藤大樹、澤本夏輝、瀬口黎弥、堀夏喜、木村慧人が登場。一気に会場の空気を変えテンションを上げると、ヴォーカルの八木勇征と中島颯太も登場し、全員が顔のマスクを取ると、爆発音にも似た歓声が響き渡る。それぞれ一人ひとりがビジョンに映し出されると笑顔を見せ、さらに会場の温度が上がっていく。
八木の「行くぞ! FANTASTICS!」という声から始まったのは、疾走感あふれる「STARBOYS」。中島の歌声がのびやかに響き渡り、八木の落ち着いた歌声が包み込んでいく。そんなふたりの歌声に合わせるように、力強く、爽やかなパフォーマンスで魅せていく。客席を見渡してとてもうれしそうな佐藤の笑顔も印象的だ。バンドの生演奏に合わせ、お互いにしっかりと認め合い、声を重ねるヴォーカルと、楽曲をさらに色づいたパフォーマンスで魅せていくパフォーマーとで作り上げていくステージは、最初の1曲目から圧倒的な光を放ち、視線を集めていく。全員がステージ横1列になってパフォーマンスする姿は、自信と余裕に満ちていて、とても輝かしい。
さらにコール&レスポンスから始まった「OVER DRIVE」は木村と澤本が客席を一気に煽り、クラップで盛り上げていく。世界の圧倒的なパフォーマンスに歓声が上がり、サビ前の八木と中島の訴えかけるような歌声、その後の爆発的に盛り上がるサビなど緩急のあるステージにテンションが上がり続けていく。センターステージまで世界が先頭となり走っていき、メンバーがそれぞれ背中合わせとなって360度会場を埋め尽くすFANTARTOに向かって手を上げて煽っていく。中島が「ブチあがる準備はできていますか⁉」と叫ぶと大きな歓声が上がり、この公演にDVD収録が入っていることを報告。「ここにいる全員で声を出していきましょう!」と煽ると、「Tell Me」がスタート。巧みなパフォーマンスにそれぞれの仕草が映し出されると歓声が上がり、八木がセクシーな視線を送るとさらに大きな声が上がる。メンバーみんなが遊び心もありながら、とても楽しそうにパフォーマンスをしていく姿が印象的だ。曲の途中で澤本がジャケットを脱ぎ妖艶に魅せ、八木がピンクの光を浴びて伸びやかに歌うなど、それぞれの魅力をしっかりとみせていく。「TO THE SKY」ではものすごい数のレーザーに包まれ、会場にいるすべての人がパフォーマンスを楽しめるように360度に配慮したセンターステージでのパフォーマンスはさすが。木村のキレのある洗練されたダンスに、堀の長身を活かしたスマートで、でも遊び心も感じるダンスなど、それぞれの個性を堪能することができた。そのままたたみかけるように「Drive Me Crazy」が始まると、八木の「手を上げて!」という声で一気に盛り上がる。ステージ上のカメラマンに向かって一列になり、次々とメンバーがカメラに向かっていくと、ビジョンには至近距離の顔が映っていく。カメラに向かって瀬口がキスを、堀は投げキスをするとさらに会場は大きな歓声で沸いていた。
映像が明けたあと、水色が散りばめられた白い衣装に着替え、これまでとはまた違う爽やかな姿で「サンタモニカ・ロリポップ」がスタート。心地良いサウンドにのりながら、ヴォーカルのふたりをぐるりと囲んでダンスをして回っていくパフォーマーが次々とじゃれ合っていく姿は、とってもピースフル。八木が「手を大きく上に上げて思い出を作っていきましょう!」と言って始まった「Flying Fish」では、メンバーがそれぞれ客席に手を振りながらステージを練り歩き、しっかりと気持ちを届けていく。メンバー全員が口ずさみながら、まさに“ユートピア”な空間を作り上げていく。大きなアリーナ全体に想いが届き、驚くほど気持ち良く、心地良い空間で、観客は多くの人たちがひとつになった瞬間を当事者として体感する。
赤と青のレーザーが作り上げた鳥かごのような空間に入り込んだ澤本が、美しいダンスを魅せ、泳ぐようにせり上がったステージに登っていくと、メンバー全員がそこに続き、「Hey, darlin’」をしっとりと聴かせていく。この曲が持つ世界観をしっかりと伝えるかのような、切なさがあふれ出るパフォーマンスはさすが。さらにメインステージの後ろにある大きなビジョンにそれぞれのダンスが映し出され、メンバーの表情もしっかりと堪能することができた。
赤いライトに包まれ、中島のタイトルコールで始まったのは「BABY ROSE」。ステージ上に歌詞が映し出され、より世界観が色濃く反映されていく。しっかりと世界に入り込んでいく中島と八木のヴォーカルに、切なくて苦しい歌詞の主人公を表現するかのようなパフォーマンスが美しい。より情緒豊かなパフォーマンスをしっかりとみせることができるのも、彼らの大きな魅力のひとつだろう。ラストに八木の妖しい微笑みが映し出されて終わると、大きな歓声で包まれた。
MCでは中島が「楽しみにしていましたか⁉」と聞くと、大きく声が上がり、その声に反応するかのように「僕たちもです!」と答え、「皆さんが持ってきたパワーを全部幸せに変えたいので楽しんでいきましょう!」と叫ぶと「it’s all good」がスタート。夕暮れの海の映像をバックに、メロウなダンスを魅せていきながら、八木と中島は客席にマイクを向けて一緒に歌い、会場がひとつにまとまっていく。
スモークが焚かれたステージにグランドピアノが置かれ、始まったのが「Turn to You」。中島がピアノで弾き語りを始めると、途中から向かいの椅子に座った八木も一緒に歌い始める。八木の力強さと儚さを持ち合わせる歌声、中島の繊細だけど芯がある歌声が訴えかけてくるメッセージはとても優しくて、温かい。とてもドラマティックな空間で、ふたりはしっかりと目を合わせ、息を合わせながら歌い上げていく。曲が終わっても止まない拍手のなか、中島が「この曲とともに前に進んでいきましょう。聴いてください」と話し、「Winding Road~未来へ~」がスタート。しっかりとその美しい歌声を聴かせ、日本語が持つ美しさ、力強さを届けてくれた瞬間だった。
ふたりでしっかりとお辞儀をしたあと、うれしそうに客席を眺めた八木は「会場の明かりをつけてもらっていいですか⁉」とスタッフにお願い。明るくなった客席を眺めてはさらにうれしそうな表情を浮かべ、全員が楽しんでいる姿を確認。中島は生バンドが入ったことを報告し、「毎回違う演出で駆け抜けています」と話す。サラッと話しているが、これは決して簡単なことではない。彼らの結束力、実力があるからこそできること。さらに八木はバンドメンバーの演奏に対し「毎回アレンジも違うよね?」と話し、1公演1公演すべてが特別であることを教えてくれた。
さらに中島は「2020年にアリーナツアーを発表していたんですが、コロナ禍で初日を迎える4日前に全公演中止になりました。そのときもバンドメンバーと最終リハまでやっていたんですが、4年後、こうやって思い出を作ることができています。心からありがとうございます」と気持ちを素直に述べ、「今は、本当にたくさんのダンス&ヴォーカルグループがいて、その中で僕たちを見つけてくれて、大切な時間を使ってくれて、会いに来てくれて本当に感謝しています。出会ったからには、9人が幸せにしていきます」「皆さん好きなことがあると思いますが、好きなことに嘘をつかず、誰に何を言われようと信じてもらいたいなって思います。僕自身も歌を歌うことが大好きで、皆さんと音楽を楽しめるのが大好きで。メンバーも大好きで、FANTAROの皆さんも大好きで、皆さんがいるから強く生きていけるんだって思うんです。自分らしく生きてください。辛くなったらまた会いに来てください。一緒に歩んでいきたいと思います。次の曲はいろんな想いを込めて歌いたいと思います」と熱くコメント。そのまま続く「アプデライフ」では、自分らしくいるすばらしさを教えてくれ、緩やかで、とても自由で、楽しい時間を感じさせてくれた。八木と中島がグータッチをし、ビジョンにはふたりでピースした写真が映し出されていく。
空気がガラッと変わり、パフォーマー6人が登場。堀と澤本、木村と世界が登場し、その中から佐藤が飛び上がって登場し、圧倒的なパフォーマンスで魅せていく。サングラスをかけ、タンクトップで登場した瀬口がセンターステージで独創的なダンスを魅せた最後に着ていたタンクトップを引きちぎると、澤本がアクロバティックなダンスで魅せ、木村はセクシーなサウンドにしなやかで力強いダンスで魅了する。堀がテクニカルでクールなパフォーマンスを披露したあと、センターステージに登場した世界は先ほど瀬口が引きちぎったタンクトップを回収し、ダンスをスタート。一気に空気を変え、細やかさとダイナミックさが同居する、圧倒的で、遊び心があふれるダンスで会場のテンションを上げていく。すぐにサングラスをかけた八木と、フードを被った中島が登場し、一気に客席を煽り始める。それぞれがカジュアルな衣装に身を包み踊る姿からは、この場所を本当に楽しんでいる姿が伝わってくる。
瀬口の「まだまだ楽しんでいけますか⁉」の声に応えるようにコール&レスポンスが始まり、みんながクラップで答えると、メンバーがかなりの熱量で暴れながらFANTAROとコミュニケーションを楽しみ、「Can’t Give You Up(Remix)」がスタート。続く「WHAT A WONDER」「Play Back」「Tarte Tatin」のメドレーではメンバー同士もわちゃわちゃし始め、瀬口が八木の頬にキスをする姿がビジョンに映し出されると悲鳴にも似た声が上がり、中島が「まだまだ終わらないですよ!」と声を上げて「Easy come , easy go」では、それぞれ自撮りをしてじゃれ合いながらうれしそうにしているメンバーの表情を見た客席もつられたように笑顔になっていく。全員が揃ってダンスをすると、さらに熱気に包まれ、会場中に銀テープが舞い上がった。
すると今度はボーリングのピンの衣装に着替えてひと遊び。倒されたり、フリスビーを持って客席を周ったりと多幸感にあふれた空間が広がっていく。客席を一周した堀と世界が、あまりに広くて大変だったと訴えるシーンも(笑)。その後、佐藤を先頭に「Choo Choo TRAIN」が始まるとさらに会場がひとつになり、曲の力を再確認。今度は佐藤が八木の頬にキスをすると、堀と瀬口がそのふたりの横にやって来てギュッと集まりビジョンに収まる。澤本が佐藤にかまいすぎて笑顔で飛ばされるシーンもあり(笑)、彼らの仲の良さがにじみ出た瞬間だった。本編最後は「ギリギリRide it out」でまだまだ余力を感じさせるパフォーマンスを魅せ、センターステージでは瀬口、八木、木村、堀が上半身裸になりその興奮を視覚から伝えると、最後には舌を出した八木がビジョンに映し出され幕を閉じた。
アンコールではビジョンに月が浮かび上がると白い衣装に身を包んだメンバーが登場。緊張感漂うサウンドが身体中に響き渡る「DARK MATTER」で妖艶に魅せ、キャッチーな「Peppermint Yum」でまったく違う魅力を展開していく彼らの幅を一気に感じさせていく。それぞれがツアーTシャツに着替え登場すると、木村は“国民の弟”、中島は“FANTASTICSが生んだ天使”など、即席キャッチコピーで挨拶をして笑いを集めていく。舞台やドラマ、映画にラジオなどメンバーがさまざまなお知らせを報告し、彼らがどんどん大きな存在になっていくことが体感できる。その中のひとつであるアニメ主題歌となった新曲「Sugar Blood Kiss」を披露したあと、八木は「幸せですか?」と語り始め、「慧人がよく言うんですけど、『奥の人まで届くようなパフォーマンスをします』って。本当にそのとおりで、会場の一人ひとりすべての人に伝わるように心掛けました。かけがえのない時間になったと思います」と話すと、中島は「皆さんがいてくださることで僕たちは活動ができています。コロナ禍でツアーができなくなって、直接会えなくても生活ができて、生きることができたときにアーティストとしての存在意義を考える日々になりました。でも、こうやって笑顔を見たり、メンバーの顔を見たときにこの時間がなくなるのが本当に嫌だな、ずっとあってほしいと強く思いました。人生のなかでFANTASTICSという存在がなくてはならない存在になったいま、一緒に支え合って進んでいきたいと思います」と話し、「僕たちは翔太くんの夢を背負って、9人でもっともっとFANTAROの皆さんとの夢を掴んでいきたいと思います」と話すと、中尾がデザインしたファン太郎のぬいぐるみが映し出される。
ラストは「FANTASTIC9」をオーケストラバージョンで披露。メンバーが横並びになり、青い光を浴びて、しっかりと客席を眺め、その想いを届けていく。2番からはステージを練り歩き、FANTAROとコミュニケーションをとるメンバーたちの表情には、最高の笑顔が咲き誇っていた。
最後、パフォーマーそれぞれがステージをあとにする際に、「これからも突き抜けてよろしく!」(澤本)、「皆さんの笑顔を見ると自然と頑張れます!」(木村)、「僕らも後悔ないです! また遊びに来てください!」(佐藤)、「今日は幸せでしたか⁉ 僕たちは皆さんのおかげで幸せになっています!」(瀬口)、「皆さんと一緒に駆け抜けたライヴだったと思います」(堀)、そして最後に世界が「次に会うときは僕たちも進化しているので、皆さんもそのときまで頑張ってください! 絶対にまた会いましょう!」と話し、大いに盛り上がったあと、全員が一列に。最後の最後に中島が「皆さんの笑顔で本当に頑張れました! また必ず会いましょう!」と伝え、全員が手をつないだまま深くお辞儀をして、幕を閉じた。
Photography_塩崎亨,松原裕之
Text_吉田可奈
開演前から、客席にはこの公演のフラッグを持ったFANTAROが期待で胸を膨らましていることが伝わってくる。メインステージのビジョンにカウントダウンの映像が映し出されると一気に歓声が上がり、全員でカウントダウンをし終わった瞬間、ステージには発光するかのようなイエローの衣装に身を包み、口元にマスクをしたパフォーマーの世界、佐藤大樹、澤本夏輝、瀬口黎弥、堀夏喜、木村慧人が登場。一気に会場の空気を変えテンションを上げると、ヴォーカルの八木勇征と中島颯太も登場し、全員が顔のマスクを取ると、爆発音にも似た歓声が響き渡る。それぞれ一人ひとりがビジョンに映し出されると笑顔を見せ、さらに会場の温度が上がっていく。
八木の「行くぞ! FANTASTICS!」という声から始まったのは、疾走感あふれる「STARBOYS」。中島の歌声がのびやかに響き渡り、八木の落ち着いた歌声が包み込んでいく。そんなふたりの歌声に合わせるように、力強く、爽やかなパフォーマンスで魅せていく。客席を見渡してとてもうれしそうな佐藤の笑顔も印象的だ。バンドの生演奏に合わせ、お互いにしっかりと認め合い、声を重ねるヴォーカルと、楽曲をさらに色づいたパフォーマンスで魅せていくパフォーマーとで作り上げていくステージは、最初の1曲目から圧倒的な光を放ち、視線を集めていく。全員がステージ横1列になってパフォーマンスする姿は、自信と余裕に満ちていて、とても輝かしい。
さらにコール&レスポンスから始まった「OVER DRIVE」は木村と澤本が客席を一気に煽り、クラップで盛り上げていく。世界の圧倒的なパフォーマンスに歓声が上がり、サビ前の八木と中島の訴えかけるような歌声、その後の爆発的に盛り上がるサビなど緩急のあるステージにテンションが上がり続けていく。センターステージまで世界が先頭となり走っていき、メンバーがそれぞれ背中合わせとなって360度会場を埋め尽くすFANTARTOに向かって手を上げて煽っていく。中島が「ブチあがる準備はできていますか⁉」と叫ぶと大きな歓声が上がり、この公演にDVD収録が入っていることを報告。「ここにいる全員で声を出していきましょう!」と煽ると、「Tell Me」がスタート。巧みなパフォーマンスにそれぞれの仕草が映し出されると歓声が上がり、八木がセクシーな視線を送るとさらに大きな声が上がる。メンバーみんなが遊び心もありながら、とても楽しそうにパフォーマンスをしていく姿が印象的だ。曲の途中で澤本がジャケットを脱ぎ妖艶に魅せ、八木がピンクの光を浴びて伸びやかに歌うなど、それぞれの魅力をしっかりとみせていく。「TO THE SKY」ではものすごい数のレーザーに包まれ、会場にいるすべての人がパフォーマンスを楽しめるように360度に配慮したセンターステージでのパフォーマンスはさすが。木村のキレのある洗練されたダンスに、堀の長身を活かしたスマートで、でも遊び心も感じるダンスなど、それぞれの個性を堪能することができた。そのままたたみかけるように「Drive Me Crazy」が始まると、八木の「手を上げて!」という声で一気に盛り上がる。ステージ上のカメラマンに向かって一列になり、次々とメンバーがカメラに向かっていくと、ビジョンには至近距離の顔が映っていく。カメラに向かって瀬口がキスを、堀は投げキスをするとさらに会場は大きな歓声で沸いていた。
映像が明けたあと、水色が散りばめられた白い衣装に着替え、これまでとはまた違う爽やかな姿で「サンタモニカ・ロリポップ」がスタート。心地良いサウンドにのりながら、ヴォーカルのふたりをぐるりと囲んでダンスをして回っていくパフォーマーが次々とじゃれ合っていく姿は、とってもピースフル。八木が「手を大きく上に上げて思い出を作っていきましょう!」と言って始まった「Flying Fish」では、メンバーがそれぞれ客席に手を振りながらステージを練り歩き、しっかりと気持ちを届けていく。メンバー全員が口ずさみながら、まさに“ユートピア”な空間を作り上げていく。大きなアリーナ全体に想いが届き、驚くほど気持ち良く、心地良い空間で、観客は多くの人たちがひとつになった瞬間を当事者として体感する。
赤と青のレーザーが作り上げた鳥かごのような空間に入り込んだ澤本が、美しいダンスを魅せ、泳ぐようにせり上がったステージに登っていくと、メンバー全員がそこに続き、「Hey, darlin’」をしっとりと聴かせていく。この曲が持つ世界観をしっかりと伝えるかのような、切なさがあふれ出るパフォーマンスはさすが。さらにメインステージの後ろにある大きなビジョンにそれぞれのダンスが映し出され、メンバーの表情もしっかりと堪能することができた。
赤いライトに包まれ、中島のタイトルコールで始まったのは「BABY ROSE」。ステージ上に歌詞が映し出され、より世界観が色濃く反映されていく。しっかりと世界に入り込んでいく中島と八木のヴォーカルに、切なくて苦しい歌詞の主人公を表現するかのようなパフォーマンスが美しい。より情緒豊かなパフォーマンスをしっかりとみせることができるのも、彼らの大きな魅力のひとつだろう。ラストに八木の妖しい微笑みが映し出されて終わると、大きな歓声で包まれた。
MCでは中島が「楽しみにしていましたか⁉」と聞くと、大きく声が上がり、その声に反応するかのように「僕たちもです!」と答え、「皆さんが持ってきたパワーを全部幸せに変えたいので楽しんでいきましょう!」と叫ぶと「it’s all good」がスタート。夕暮れの海の映像をバックに、メロウなダンスを魅せていきながら、八木と中島は客席にマイクを向けて一緒に歌い、会場がひとつにまとまっていく。
スモークが焚かれたステージにグランドピアノが置かれ、始まったのが「Turn to You」。中島がピアノで弾き語りを始めると、途中から向かいの椅子に座った八木も一緒に歌い始める。八木の力強さと儚さを持ち合わせる歌声、中島の繊細だけど芯がある歌声が訴えかけてくるメッセージはとても優しくて、温かい。とてもドラマティックな空間で、ふたりはしっかりと目を合わせ、息を合わせながら歌い上げていく。曲が終わっても止まない拍手のなか、中島が「この曲とともに前に進んでいきましょう。聴いてください」と話し、「Winding Road~未来へ~」がスタート。しっかりとその美しい歌声を聴かせ、日本語が持つ美しさ、力強さを届けてくれた瞬間だった。
ふたりでしっかりとお辞儀をしたあと、うれしそうに客席を眺めた八木は「会場の明かりをつけてもらっていいですか⁉」とスタッフにお願い。明るくなった客席を眺めてはさらにうれしそうな表情を浮かべ、全員が楽しんでいる姿を確認。中島は生バンドが入ったことを報告し、「毎回違う演出で駆け抜けています」と話す。サラッと話しているが、これは決して簡単なことではない。彼らの結束力、実力があるからこそできること。さらに八木はバンドメンバーの演奏に対し「毎回アレンジも違うよね?」と話し、1公演1公演すべてが特別であることを教えてくれた。
さらに中島は「2020年にアリーナツアーを発表していたんですが、コロナ禍で初日を迎える4日前に全公演中止になりました。そのときもバンドメンバーと最終リハまでやっていたんですが、4年後、こうやって思い出を作ることができています。心からありがとうございます」と気持ちを素直に述べ、「今は、本当にたくさんのダンス&ヴォーカルグループがいて、その中で僕たちを見つけてくれて、大切な時間を使ってくれて、会いに来てくれて本当に感謝しています。出会ったからには、9人が幸せにしていきます」「皆さん好きなことがあると思いますが、好きなことに嘘をつかず、誰に何を言われようと信じてもらいたいなって思います。僕自身も歌を歌うことが大好きで、皆さんと音楽を楽しめるのが大好きで。メンバーも大好きで、FANTAROの皆さんも大好きで、皆さんがいるから強く生きていけるんだって思うんです。自分らしく生きてください。辛くなったらまた会いに来てください。一緒に歩んでいきたいと思います。次の曲はいろんな想いを込めて歌いたいと思います」と熱くコメント。そのまま続く「アプデライフ」では、自分らしくいるすばらしさを教えてくれ、緩やかで、とても自由で、楽しい時間を感じさせてくれた。八木と中島がグータッチをし、ビジョンにはふたりでピースした写真が映し出されていく。
空気がガラッと変わり、パフォーマー6人が登場。堀と澤本、木村と世界が登場し、その中から佐藤が飛び上がって登場し、圧倒的なパフォーマンスで魅せていく。サングラスをかけ、タンクトップで登場した瀬口がセンターステージで独創的なダンスを魅せた最後に着ていたタンクトップを引きちぎると、澤本がアクロバティックなダンスで魅せ、木村はセクシーなサウンドにしなやかで力強いダンスで魅了する。堀がテクニカルでクールなパフォーマンスを披露したあと、センターステージに登場した世界は先ほど瀬口が引きちぎったタンクトップを回収し、ダンスをスタート。一気に空気を変え、細やかさとダイナミックさが同居する、圧倒的で、遊び心があふれるダンスで会場のテンションを上げていく。すぐにサングラスをかけた八木と、フードを被った中島が登場し、一気に客席を煽り始める。それぞれがカジュアルな衣装に身を包み踊る姿からは、この場所を本当に楽しんでいる姿が伝わってくる。
瀬口の「まだまだ楽しんでいけますか⁉」の声に応えるようにコール&レスポンスが始まり、みんながクラップで答えると、メンバーがかなりの熱量で暴れながらFANTAROとコミュニケーションを楽しみ、「Can’t Give You Up(Remix)」がスタート。続く「WHAT A WONDER」「Play Back」「Tarte Tatin」のメドレーではメンバー同士もわちゃわちゃし始め、瀬口が八木の頬にキスをする姿がビジョンに映し出されると悲鳴にも似た声が上がり、中島が「まだまだ終わらないですよ!」と声を上げて「Easy come , easy go」では、それぞれ自撮りをしてじゃれ合いながらうれしそうにしているメンバーの表情を見た客席もつられたように笑顔になっていく。全員が揃ってダンスをすると、さらに熱気に包まれ、会場中に銀テープが舞い上がった。
すると今度はボーリングのピンの衣装に着替えてひと遊び。倒されたり、フリスビーを持って客席を周ったりと多幸感にあふれた空間が広がっていく。客席を一周した堀と世界が、あまりに広くて大変だったと訴えるシーンも(笑)。その後、佐藤を先頭に「Choo Choo TRAIN」が始まるとさらに会場がひとつになり、曲の力を再確認。今度は佐藤が八木の頬にキスをすると、堀と瀬口がそのふたりの横にやって来てギュッと集まりビジョンに収まる。澤本が佐藤にかまいすぎて笑顔で飛ばされるシーンもあり(笑)、彼らの仲の良さがにじみ出た瞬間だった。本編最後は「ギリギリRide it out」でまだまだ余力を感じさせるパフォーマンスを魅せ、センターステージでは瀬口、八木、木村、堀が上半身裸になりその興奮を視覚から伝えると、最後には舌を出した八木がビジョンに映し出され幕を閉じた。
アンコールではビジョンに月が浮かび上がると白い衣装に身を包んだメンバーが登場。緊張感漂うサウンドが身体中に響き渡る「DARK MATTER」で妖艶に魅せ、キャッチーな「Peppermint Yum」でまったく違う魅力を展開していく彼らの幅を一気に感じさせていく。それぞれがツアーTシャツに着替え登場すると、木村は“国民の弟”、中島は“FANTASTICSが生んだ天使”など、即席キャッチコピーで挨拶をして笑いを集めていく。舞台やドラマ、映画にラジオなどメンバーがさまざまなお知らせを報告し、彼らがどんどん大きな存在になっていくことが体感できる。その中のひとつであるアニメ主題歌となった新曲「Sugar Blood Kiss」を披露したあと、八木は「幸せですか?」と語り始め、「慧人がよく言うんですけど、『奥の人まで届くようなパフォーマンスをします』って。本当にそのとおりで、会場の一人ひとりすべての人に伝わるように心掛けました。かけがえのない時間になったと思います」と話すと、中島は「皆さんがいてくださることで僕たちは活動ができています。コロナ禍でツアーができなくなって、直接会えなくても生活ができて、生きることができたときにアーティストとしての存在意義を考える日々になりました。でも、こうやって笑顔を見たり、メンバーの顔を見たときにこの時間がなくなるのが本当に嫌だな、ずっとあってほしいと強く思いました。人生のなかでFANTASTICSという存在がなくてはならない存在になったいま、一緒に支え合って進んでいきたいと思います」と話し、「僕たちは翔太くんの夢を背負って、9人でもっともっとFANTAROの皆さんとの夢を掴んでいきたいと思います」と話すと、中尾がデザインしたファン太郎のぬいぐるみが映し出される。
ラストは「FANTASTIC9」をオーケストラバージョンで披露。メンバーが横並びになり、青い光を浴びて、しっかりと客席を眺め、その想いを届けていく。2番からはステージを練り歩き、FANTAROとコミュニケーションをとるメンバーたちの表情には、最高の笑顔が咲き誇っていた。
最後、パフォーマーそれぞれがステージをあとにする際に、「これからも突き抜けてよろしく!」(澤本)、「皆さんの笑顔を見ると自然と頑張れます!」(木村)、「僕らも後悔ないです! また遊びに来てください!」(佐藤)、「今日は幸せでしたか⁉ 僕たちは皆さんのおかげで幸せになっています!」(瀬口)、「皆さんと一緒に駆け抜けたライヴだったと思います」(堀)、そして最後に世界が「次に会うときは僕たちも進化しているので、皆さんもそのときまで頑張ってください! 絶対にまた会いましょう!」と話し、大いに盛り上がったあと、全員が一列に。最後の最後に中島が「皆さんの笑顔で本当に頑張れました! また必ず会いましょう!」と伝え、全員が手をつないだまま深くお辞儀をして、幕を閉じた。
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