2023.12.8

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
小野塚勇人

  • 劇団EXILE FC対象
  • 一部フリー
小野塚勇人が出演する映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が12月8日(金)より全国公開となる。原作は、現代の女子高生・百合が、1945年の日本にタイムスリップし、そこで出会った彰にどんどん惹かれていくものの、彼は特攻隊員だった――という、世代を問わず心揺さぶられるラブストーリー。ここでは、代々陸軍家系の加藤役を演じる小野塚に役どころや撮影時のエピソードなどについて話を聞いた。

新たに出演される映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、ベストセラー小説の初実写化となりますが、原作はお読みになりましたか?


今作への出演が決まったあと、読ませていただきました。戦争という日本の歴史というか、忘れてはいけないものについて、子どものときに僕はおじいちゃんから当時の状況などを聞くことがあったのですが、確実に今の10代20代前半の人たちとかは、実際にそういう話を聞いたり触れる機会が少なくなってきていると思います。今、実際に戦争を体験してきた方たちがどれくらいいらっしゃるのかわからないですけど、考えてみたら、メチャクチャ古い歴史のようで、まだ100年も経ってない出来事なんです。でも、この忘れちゃいけないことも、年が経過していくごとにどんどん忘れ去られていってしまう。そういうなかでこの作品は、戦争の惨劇などをしっかりと伝えつつも、それを恋物語として描くことで、戦争を知らない若い人たちにも届く作品に仕上がっていると思います。正直、戦争作品と聞くだけでものすごく重たい印象があるじゃないですか。Z世代って呼ばれている今の子たちには、ちょっと受け入れづらい題材ではあると思うんですけど、恋愛小説として昇華しているので、構えずに見ていただくことができますし、何よりその恋路を見ながら戦争について考えさせられる作品になっていると思います。

本作は、SNSで「本を読んで初めて泣いた」「号泣してやばい」など、10代を中心に話題となりましたが、小野塚さんも読んでいるときに思わず感情が昂って涙してしまうようなことはありましたか?


現代の女子高生である主人公の百合(福原遥)が、ある日目を覚ますと1945年6月、戦時中の日本で、21歳の特攻隊員である彰(水上恒司)と出会い、恋に落ちるのですが、今とは状況にしろ常識にしろすべてが違うなかで、現代人である百合の言動はその時代に生きている人たちとは大きくかけ離れていたんです。小説を読んでいる方は百合の視点で見て、彼女の言動に賛同している方が多かったと思うのですが、僕が今回演じたのはその時代を生きてる軍人の象徴のような役どころだったので、その視点で見ると「みんな百合に優しいな、甘いんだよな」って。思考や立ち振る舞いに関しても完全にそっち(戦時中)だったので。なので、感動したり、泣くようなことはなかったです。

確かにどの視点から見るかによって物語の捉え方が大きく変わってきますよね。今回小野塚さんが演じられた加藤という役どころについて詳しく教えていただけますか?


小説の役と実際に自分が演じた加藤とでは、人物自体は一緒なんですけど、バックボーンが違っているんです。そこは映画ならではのオリジナルっぽくなっています。

そうなんですね。


加藤は帝国軍人という、その時代の象徴の家系に生まれてきて、お国のために特攻に行くのは当たり前と思っているんです。その時代の正義というか、そうせざるを得ない状況まで全員が追い込まれていたという、ある種、洗脳といいますか。でも、百合というイレギュラーな存在がタイムスリップしてきたことによって、その常識が覆されるようなことをされ、加藤は百合に対して嫌悪感を抱き、あたりが強くなるんです。(福原)遥ちゃん自身はすごくいい子なので申し訳ないと思いながら、そこは手加減せず、心を鬼にしていこうと決めて加藤を演じました。

そういう意味でも、役作りは大変だったのでは?


まず見た目でいえば、3キロ落としました。終戦間際、食料がほぼなくて苦しい状態の中、特攻隊が行く最終の軍事基地の近くの食堂の話なので。当時の写真とかを見ても、ふくよかなのは違うなと思って、ジムで鍛えつつ、さらに食事に気を付けて、炭水化物をなるべく摂らないように、夜食べる量を減らすようにしていたら、3キロくらいバーっと落ちました。あとは、シンプルに戦争について調べたり、YouTubeとかで特攻隊の人たちの話や、当時どういう気持ちだったかなどを見たりしました。どちらかというと役作りのためというよりは、その時代に対して理解があるとやりやすいなと思って。というのも、戦争ものをやるのはこれが初めてじゃなくて、デビュー当時にやらせていただいたことがあって。そこでかなり戦争についても調べたし、当時の役が結構自分のベースにもなっています。だから、わりとスッといけたかなって思いますね。

その後、いろいろな作品や役を経験されたなかで、時を経て改めて戦争ものを演じられてみていかがでしたか?


最初に演じたのは19歳、20歳なので、もう10年経っているのですが、もう一回戦争というものに作品を通して触れてみて、今の世の中の現状であったり、いろいろ感じることがありました。戦争というものが僕ら日本人にとって少し前の話だったじゃないですか。でも、飛行機で数時間飛んだ先で、また同じような悲劇が繰り広げられている。今、日本は平和だけど、いつどうなるかわからない。そんなことを思いながら、でも、絶対(戦争は)やっちゃいけないんだぞ! と。コンプライアンスがなんだって最近は制限があるので、あまり直接的ではなく間接的に伝えることが多くなっていると思うんですけど、今の自分がこのタイミングで戦争ものをやらせていただけるということに対して、自分の仕事を活かすなら、魂を込めて演じるのはもちろん、役や作品を通して若い子たちにメッセージとして伝えていかなきゃいけないなって。だから、ただの恋愛ものとして捉えてほしくないというか、伝えたいことはそこじゃないよという裏メッセージがあるので、そこはしっかり届けていけたらいいなと思います。

撮影時の印象深いエピソードがあれば教えてください。


役が決まってからクランクインまでの時間もあまりなくて。しかも、最後に特攻する同じ班のチームの水上(恒司)くんをはじめ、そのメンバーと初日から結構重いシーンにいきなり入ったんです。でも、スッとみんな空気を感じて察してやれて、成田洋一監督も現場でちょっと涙が出そうになるぐらい、いい雰囲気でやれたんじゃないかなと思います。

撮影を重ねていくうえで気持ちを入れていくのではなく、いきなりしょっぱなから気持ちを入れるのは難しかったんじゃないですか?


僕たちは食堂のシーンがほとんどだったのですが、食堂で「特攻に行ってきます」と宣言したり、こちら側は別に「かわいそうでしょ、俺たち」というつもりではまったくやってなくて。ただ普通にご飯を食べておいしいなとか、みんなで馬鹿騒ぎしたりしているのですが、見ている方たちには「でも、死にに行くんだ、こんな人たちが」と思うところがあると思うんです。でも僕たちからしたら、残り少ない命が決まっていますけど、「全力で生きてるんだぞ」みたいなところを感じてもらえればいいなと。あと、撮影時のエピソードで言えば、野球をするシーンがあるのですが、そのためにみんなで空き時間にみんなでキャッチボールをやったりして野球の練習をしました。ちょっと部活を思い出すような感じで楽しかったです。

どなたが上手だったんですか?


水上くんが圧倒的に上手かったです。確か野球をずっとやってたんじゃないかな。

撮影の合間は重々しい空気感ではなく、和やかな雰囲気だったと。


そうですね。

現代の女子高生・百合が目を覚ますと1945年の日本だったというストーリーにちなんで、小野塚さん自身、ヴィンテージやレトロな物などに興味はありますか?


興味があるというか、単純にアンティークっぽいのや雰囲気は好きですけどね。机とか椅子とか、あと、洋服も古着っぽいというか、ちょっとカジュアルな感じは好きですね。

お部屋もそういう感じですか?


いや、特にそういうわけではなく、普通です。そういう感じにしたいなとは思いますけど、結局利便性を選んじゃうので(笑)。

改めて本作の見どころなどを教えてください。


先ほども言いましたが、飛行機で数時間行ったところで戦争をやっているのに、日本がこの先ずっと戦争がないかって言われたら、そんなものは何の保証もない話なわけで。戦争を単純にやっちゃいけないんだぞって終わらせるのではなく、何でやっちゃいけないかということがこの作品を通して感じ取ってもらえるんじゃないかと思います。子どもが親より先に死んでいくのは、親からしたら、死ぬほど嫌だと思うんです。正直、行かせたくない。だけど、その時代はお国のためだから仕方ないという。単純に「あ、何機墜落」じゃないですし。人ひとりが死んだだけで、その周りにいるどれだけの人たちが辛い思いをするか。みんなそのなかでも人間関係があって、家族や子ども、恋人がいたりという、そこの部分をもっと見てほしいですし、感じてほしいなと思います。

命の尊さを改めて知ることができると。


最近嫌なニュースが多いですが、命の大切さを再確認できる作品だと思います。

命がないと恋愛もできないし、好きな食べ物も食べられないですからね。ちょっと嫌なことがあるともういいやって自暴自棄になりがちな今の世の中だからこそ、この作品はより多くの人に響くのではないでしょうか。


100年も経ってない出来事なので、ここまで平和になってくれたっていうのは、その時代に生きた人たちの想いもあると思いますし、その上に今の僕たちがあるんだよっていうことは、やっぱり忘れちゃいけないなっていうのはありますけどね。幅広い層に見てもらえる作品だと思いますが、僕からしたら特に10代の子たちが見て、何か感じるものがあったらいいなって思っています。


MOVIE information
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』

主演/福原遥、水上恒司
出演/伊藤健太郎、嶋﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希
坪倉由幸、津田寛治、天寿光希、中嶋朋子/松坂慶子
主題歌/福山雅治「想望」(アミューズ/Polydor Records)
原作/汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)
監督/成田洋一
脚本/山浦雅大 成田洋一
製作/映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会
配給/松竹
https://movies.shochiku.co.jp/ano-hana-movie/
©️2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

photography_河合克成(株式会社125)
styling_中瀬拓外
hair&make_有村美咲
text_星野彩乃

【衣装クレジット】
《ニードルズ》のジャケット¥62,700、パンツ¥35,200(ともにネペンテス)
《リュー》のシャツ¥21,000(ティーニー ランチ)
その他・スタイリスト私物

【お問い合わせ先】
ネペンテス
03-34000-7227

ティーニー ランチ
03-6812-9341


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