2023.9.14

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。
岩田剛典

  • 三代目 J SOUL BROTHERS FC対象
  • 一部フリー
福田雄一氏が監督を務めたNetflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』が9月14日(木)よりNetflixにて配信スタートした。青柳碧人氏の同名小説をもとにした本作は、童話の世界で起きる事件を旅の途中の赤ずきんが解決していくファンタジー&コメディミステリー。シンデレラと恋に落ちる王子様役で出演した岩田剛典に本作の魅力や福田監督とのエピソードなどについて語ってもらった。

Netflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、岩田さんにとって『新解釈・三國志』に続く福田雄一監督二作目の作品。オファーをもらったときはどう思いましたか?


設定が“王子様”で、役名がない役というのは初めてですから、これは、いじってきているのかなと(笑)。オファーがきた時点で福田さんなりのいじりなのかと思いましたが、前回ご一緒させていただいて、もう一度声を掛けていただけたのはすごくうれしかったです。作品自体もおとぎ話を要素として使っているけど、謎解きも凝っているし、正統派のミステリーとして先読みができない展開でシンプルにおもしろい話だなと思いました。ただ、『新解釈・三國志』はわりと笑いの要素があったけど、今回は自分の役にはそれがなくて。現場ではちょっと“むずがゆい感覚”があったかもしれないです。

“むずがゆい感覚”ですか?


自分は何もしなくていいのかな、笑いを取らないでいいのかな、みたいな。前回は監督から「ここでちょっと踊ってもらおうか」とかあったけど、今回は何も、ひと言も言われなくて。ふざけるところもないし、「こうしてください」っていうのもない。「ツアー、忙しいでしょう?」とかそういう話をしたぐらいで演技についても、衣装合わせで何か言われたこともなくて、キャストの中でふざけていないのはたぶん、僕とシンデレラぐらいじゃないですか。

何も言われないっていうのも、ある意味、不安ですね。


すごく不安で(笑)。淡々と進んで淡々と終わっていくから「これでいいですか」と聞くこともなく、監督がOKならいいんだろうなと。もちろんシーンによっては「自分はこうしたい」と自分なりの段取りでやりますけど、それでも何も言われなかったので、とりあえずそのまま最後まで演じた感じです。

でも、あのビジュアルだけで十分インパクトはありました。


僕もあそこまで本格的な、洋画に出てくるような典型的な“王子様”の扮装は初めてです。だから、衣装合わせがいちばんピークでおもしろかったかもしれない(笑)。こういう作品って、やっぱり世界観が大事じゃないですか。衣装やセット、メイクなど、そういうところで持っていく部分が大きいので、スタッフのこだわりをすごく感じたし、その熱量に感化され、現場も熱かった。ちなみに衣装は全部、寸法から測って作ったオリジナルです。ありモノじゃないってところも、すごく新鮮でした。ただ、意外と着込んでいるので、セリフがしゃべりづらかったです(笑)。

そこも“本物”らしく、こだわっていると。


そうだと思います。中に何枚も着て、首もずっと詰まっているから、暑いし苦しくて。今、思い返しても、ずっと首のところがきつくて声が出しづらかったイメージがあります。

昔の「王子様」って大変だったんですね。


そこもやっぱり衣装さんの「嘘をつかない」というところじゃないですか。外には見えないんだから、苦しいなら内側は省けばいいという話ですけど、それをあえてしない。ちゃんと一から全部着込んでいくって本物へのこだわりですよね。

そのせいか、いわゆる中世のコスチュームものは日本人がやると、どうしても作りもの感が出てしまうけど、今作はそれがなかった。「安っぽく見せないぞ」という作り手の気合いを感じましたし、実際、本格的だと思いました。


ヨーロッパの中世の話を日本人キャストでやるというのは本当に危ないですからね(笑)。これぐらい本気で持っていかないといけないし、スタッフさんたちのこだわりに僕らは助けていただいて、どうにか形になったんじゃないかなと。コメディですから作りものっぽくてもおもしろくできるけど、あえて固めるところは固めるというのは福田監督の真剣味だと思います。

岩田さん自身は、どんなところを意識しましたか?


脚本のとおりそのまま演じると、僕がやらなくてもいいようになってしまうので、ちょっとドラ息子感というか。世間知らずで、少しおバカちゃんみたいな雰囲気を出そうと思いました。あとは王子様ですから、立ち振る舞いや所作の美しさとか、意識したのはそこらへんかな。ただ、そもそも、お父さんの王様が(佐藤)二朗さんですからね(笑)。あの王様から生まれた子どもなので、そこまで典型的な王子様じゃなくてもいいのかなって悩んだりもして。結果的には何をやっても何を言っても、あのビジュアル、髪型とヘアメイク、服装に助けられてしまった気がします。

でも、ナチュラルな感じはしました。というのも佐藤二朗さんやムロツヨシさんといった福田組常連の役者さんは皆さん、芝居のクセや個性がすごいじゃないですか。そのなかで自然体の岩田さんの存在が一服の清涼剤のようでした(笑)。


おそらくみんなが大きくやっているから、僕がそう見えるんですよ。脚本のなかでも王子様はそういう描かれ方をしているので、「これでいいんだよな」って自分を落ち着かせていました。さっきも言ったように大丈夫かな? きっかけになる笑いを作らなくていいのかな? という気持ちは常にあったけど、終始“受け”に徹しました。

岩田さんは“受け”のお芝居でも、その“受け”がハマった結果、存在感を残す役者さんだなという印象があります。


ありがとうございます、褒めていただいて。でも、今回はもう二朗さんが仕かけてくるのを受ける、ってそれだけ。まぁ、笑いをこらえながら、我慢して芝居をし続ける苦労はありましたけど(笑)。舞踏会のシーンとかも、みんな本当にキャラが濃かったので僕は王子として、ただ、その場のフィーリングでいたっていう、そんな感じでした。


現場の雰囲気はどうでしたか?


メチャクチャ和やかでした。こういう楽しい作品だからっていうのもあって、ずっとふざけているというか。本番では皆さん、笑いをこらえてクスクスするってことはなかったけど、リハーサルとかは「これ大丈夫か?」というぐらいずっと笑っていました。ただ、コメディ作品って実はすごく緊張するんです。1回目の笑いを越えられない難しさがあって、監督もそんなにカットを重ねないから、常に一発勝負みたいな。そういう緊張感があるんですよ。

福田作品ならではのアドリブのようなシーンも、実はアドリブはほとんどないと聞いたことがあるのですが。


そうなんです。脚本の時点で当て書きになっていて、たとえば「二朗さんだったらこう来るだろうな」って想像できる内容になっているんですよ。だから、アドリブのように見えるけど、ちゃんと作り込まれているんですよね。

そんな福田作品のエッセンスがぎゅっと詰まった今作を観て、改めてどんな印象を受けましたか?


まず、ものすごく煌びやかで豪華な映像と謎解きのストーリーを楽しめる作品だなと思いました。さらに、普段はなかなか観られない、おとぎ話の世界観で生きるキャスト陣一人ひとりのキャラクターを愛でることができるのもいい。いわゆる玄人受けするような作品も邦画の良さとして挙げられるけど、こういうエンタメに振り切った映画もこの時代、何も考えず没入してもらえる作品として、世の中にお届けしたいなと思いました。

岩田さんもまさにイメージどおりのプリンス像。ハマり役だと思ったのですが、ご自身で客観的に観てどうでしたか?


それね、この世界に入ってからずっとプリンス的なイメージを持たれているけど、本当に僕から一回も言ったことはないんです(笑)。だから、何がそうさせているのか、何でそう見られるのか、僕的にはわからなくて不思議。自分では王子様っぽくしようとか、まったく考えたことはないんですけど。

そういうイメージを持たれるのは嫌ですか?


若いときはちょっと嫌だったかもしれません。でも、今は全然平気です。むしろ王子様役、おもしろそう、やるやるって感じです(笑)。福田さんにも「僕でいいんですか?」と確認したら、「やってくれるの? やったー!」と言ってくださって、演じているときも楽しかったです。



MOVIE information
Netflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』

Netflixにて独占配信中
出演/橋本環奈
新木優子 岩田剛典 夏菜 若月祐美/桐谷美玲
ムロツヨシ
加治将樹 長谷川朝晴 犬飼貴丈
山本美月 キムラ緑子 真矢ミキ
佐藤二朗
原作/青柳碧人「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」(双葉社刊)
原作公式サイト/https://www.futabasha.co.jp/introduction/aoyagi/
主題歌:SEKAI NO OWARI「タイムマシン」(ユニバーサル ミュージック)
監督/福田雄一
エグゼクティブ・プロデューサー/佐藤善宏(Netflix)
企画統括/佐々木基
プロデューサー/松橋真三(クレデウス)、鈴木大造(クレデウス)
制作プロダクション/クレデウス
制作著作/テレビ朝日
企画・製作/Netflix
Netflix作品ページ/ https://www.netflix.com /赤ずきん、旅の途中で死体と出会う

photography_後藤倫人(UM)
text_若松正子

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