2025.12.17

10DANCE
町田啓太

  • 劇団EXILE FC対象
  • 一部フリー
いつもはやわらかい笑顔を絶やさない町田啓太が、この日は少し違って見えた。静かな熱と気迫をまとい、対峙した瞬間、キュッと身が引き締まる。その佇まいはNetflix映画『10DANCE』で彼が演じた杉木信也そのもので、役と現実のあわいにまだ身を置いているような印象を受けた。だが作品の余韻が抜けないのはこちらも同じかもしれない。竹内涼真さんとW主演となる本作はふたりの闘志と情熱が迸る迫力のダンスシーン、濃厚で鋭利な心理描写、そしてトップダンサー・杉木として生き切った町田の圧倒的な存在感に魅了される。この役を作り上げるため、どれだけの努力を重ね、身も心も削ったのか。その裏側に迫った。


本作に出演する決め手は何だったのでしょうか?


自分のためにやろうと思ったのが一番の理由です。僕はダンスをやっていましたが、プロのダンサーにはなれなかった人間。その想いや経験を消化できるかわからないけど、何かしら使えるものがあるなら今しかないな、と。この先はおそらくそういう機会はないだろうし、それぐらいすべてを捧げないと難しいと思える作品、役柄にはなかなか巡り会えないので自分のためにまずはやろうと決めました。

プロダンサーとして完全燃焼できなかった無念があった?


もちろんあります。夢だったので。

町田さん演じる杉木信也は「帝王」の異名をとるボールルームダンス界のチャンピオン。相当、覚悟のいる挑戦ですね。


そうですね。しかも僕は竹内(涼真)くんたちよりあとから練習に入ったので撮影まで3ヵ月ぐらいしかなかったんです。準備3ヵ月でボールルームの世界トップダンサーにならなきゃいけないし、見えなくてはいけない。無謀だとは思いましたが、竹内くんもゼロからのスタートで挑戦する覚悟を決めてやっていて。お互いにいろんなことを触発しながらやれた感じはありました。

世界トップダンサーに見えるレベルまで持っていくため、もっとも大変だったことは何ですか?


正直、何をやったかあまり覚えていないくらい大変でした。本来だったら段階を踏んでやらなくてはいけないところをいろいろ飛ばして先生たちも教えてくれたので、もう本当に詰め込んで詰め込んで。基礎をやりつつ、でも時間が差し迫っていたので精度を上げて振り付けをやっていくという感じだったから、決してきれいな練習をしていなかった。とにかくやれるもの、できることから広げていくということをひたすらずっとやり続けました。


劇中の町田さんのスキルはもちろん帝王にふさわしい圧倒的な存在感を放っていて。杉木が憑依したのかと思うくらい目を奪われ、その世界観に没入できました。ご自身はボールルームダンスの魅力、特徴はどんなところだと感じましたか?


それは先生方に聞いたほうがいいかもしれません。深みも歴史もあるものだから、その道のプロじゃないとなかなか簡単には語れないですよね。ただ僕から言えるのはそれくらい果てしなく、底も見えないので楽しむだけで踊るものではないということ。しかも、僕は杉木というキャラクターとしてダンスをやっているので、自分が踊る感覚とはまるで違う。ダンスもお芝居の延長線上にあり、杉木の感覚で踊っているので、そこには常に彼の苦しみや葛藤がともなっているんです。

では、踊っていて気持ちいい瞬間はなかった?


ラストのダンスシーンはそういう気持ちになれたかもしれない。あそこは本番で今まで以上の感覚になれたというか。その瞬間、すごいことが起こった感覚になりました。ただそれは練習を積み重ねたからこそ出てきたもの。ボールルームもラテンもひとりで踊るものじゃないので相手と一体になった感覚があり、その特別感はたぶん社交ダンスでしか味わえないものだと思います。

竹内さんと踊る場面は練習シーン含め、ほかを寄せ付けない迫力がありましたが、呼吸を合わせるためふたりで話したことは?


演技に関しては特に話さなかったです。リハーサルを重ねる中でダンスのことは先生方と一緒に話しましたが、お芝居に関しては大友(啓史)監督の領域なので監督とのやりとりになっていました。あと杉木と竹内くん演じる鈴木は似ているところもあるけど、まったく別のベクトルを持っているので、ダンスはともにやるけれど調和を求める必要がない。むしろ役の気持ちはどうとか話さないほうがいいかな、と。ふたりのキャラクター性を考えると、お芝居を通して互いを探って感じていくほうがこの作品的にはいちばんいいんじゃないかという気持ちでやりました。

竹内さんとは約8年ぶりの共演になるのですが印象は変わりましたか?


変わらないところもあるし、素敵にいろんな経験を重ねられてこられたんだろうなという頼りがいのある感じもあって。そんな竹内くんとまた再会し、がっつり一緒にやれたのは単純にうれしかったです。


一方、石井杏奈さん演じる杉木のダンスパートナー・矢上房子とのダンスシーンも素晴らしかったです。


石井さんが本当に全力を尽くしていることは、一緒にやっていたのでもちろん知っていましたし、見ていました。しかも見ていないところでも、おそらくとてつもない努力をされていて、振り付けをすると次に会ったときには必ず入っている。プロとしてダンスをやっていらした経験値もあると思いますが、それはすごいなと思いました。あと現場では先生がベタについて指導してくださったのですが、僕がかなり悩んでしまって。そんなとき石井さんが「自分がどうやったら(杉木が)踊りやすくなるのか」と先生に聞いてくれたんです。それは本当に申し訳なかったですが……最後まで一緒に頑張れたなと思います。

ダンスもそうですが、杉木の背景、人物像も複雑で悩まれたのかな、と。大友監督が「杉木はストイックで艶っぽい。その一方でひとつのことに執着して取り組んだものだけが持つある種の狂気を湛えているかのような、硬質な存在感を引き出したかった」とおっしゃっていましたが、町田さんは杉木をどのように捉えましたか?


まずラテンをやっている鈴木とは対極にいる人物像。ボールルームをやってきて、イギリスにもいたので幼いころから紳士像というものを教えられ、彼の中にはこうあるべきというイメージがある。でも、心の内にはダンスを追求するがゆえに自分をないがしろにしてしまう葛藤があり、周りに多大な影響を与えてしまうほどヒリヒリした感情を持っている。自分のそういった面をずっと抑圧している人物だと思いました。そんな杉木が鈴木と出会ったことで抑えていた感情を肯定し、どう解放していくかというところも見どころのひとつだと思うのですが、僕自身は杉木を不器用だけど愛おしい人だと思っています。その不器用さは彼の美学としているところでもありますから。

ご自身と似ているところはありますか?


似ているかどうかはわからないけど、投影している部分はたくさんあると思います。やっぱり演じるのは自分なので自然とそうなります。

冒頭でプロダンサーになれなかった自分のためにこの役を引き受けたとおっしゃっていましたが、作品が完成して気持ちは消化されましたか?


(ニヤッと笑って)どうでしょうね? その答えは僕だけのものにしておきます。



MOVIE information
Netflix映画『10DANCE』
12月18日(木)より世界独占配信
出演/竹内涼真、町田啓太
土居志央梨、石井杏奈 / 浜田信也、前田旺志郎
Nadiya Bychkova、Susie Trayling、Pasquale La Rocca
原作/井上佐藤『10DANCE』(講談社「ヤングマガジン」連載)
監督/大友啓史
脚本/吉田智子、大友啓史
エグゼクティブ・プロデューサー/佐藤善宏
プロデューサー/宮内貴子、石塚紘太
制作プロダクション/エピスコープ株式会社
企画・製作/Netflix
https://www.netflix.com/jp/title/81759550

photography_亀井隆司
styling_石川英治
hair&make_Kohey
text_若松正子

【衣装クレジット】
《ダンヒル》のジャケット、ニット、パンツ、スカーフ・すべて参考商品(すべてダンヒル)

【お問い合わせ先】
ダンヒル
0800-000-0835

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