6月28日、今年で4度目となる中務裕太のソロ公演『中務裕太のマルチダンス〜多次元裕太をお見せします 2025〜』が最終日を迎えた。これまで『BOOK ACT』の演目として行ってきた公演は、今年、『BOOK ACT』の枠を飛び出し、さらには初の関西公演も行った。
EXILE TRIBE MAGAZINEに掲載している事前インタビュー(2025.4.14公開)の中で、「ソロなので何も隠すことがない」「自分のありのままが出ている」と話していた中務だが、レジェンド級のゲスト陣を迎えたパフォーマンスは、ダンサー・中務裕太の「ありのまま」のレベルの高さを見せつけるラインナップ。
なぜここまで高みを目指し続けるのか。その問いに応えるように、今公演で初めて明かした胸の内とともに自身のルーツをたどった貴重なステージをレポートする。
「兄貴、オープニングからかっ飛んでます!!」
ナビゲーターを務めた陣(THE RAMPAGE)が思わず興奮するほど圧巻のソロダンスでスタートした『中務裕太のマルチダンス〜多次元裕太をお見せします 2025〜』。踊り終えた中務が「(ソロダンスが)長いっす」と息を切らすと、すかさず陣が「バテてどうするんですか!」と爆速でツッコミを入れるトークも安定のやりとりで、渾身のパフォーマンスに圧倒された観客の緊張をほぐしていく。中務が幕開けからトップギアで飛ばすのは、今公演で果たしたかった“原点回帰”、さらに裏テーマである“戦い”のあらわれ。「普段は見せられない本物のダンスで感動させたい」、そう語る決意の言葉に期待値が跳ね上がっていく。
プログラムは中務がオファーした3組のダンサーとそれぞれセッションする3つのラインナップで構成され、最初のゲストはSAYA YAMAMARU。ふたりの交流は2024年に放映されたストリートダンスバトル番組『R4 STREET DANCE』以来で、SAYA YAMAMARUが審査員、中務がD.LEAGUERとクルーを組んだ出場者として出会ったのが始まり。SAYA YAMAMARUが「あの番組は大変だったよね」と話を振ると「僕にとっては勝って当然、負けたら『あの人そんなもん』って思われる、メリットよりリスクのほうが大きい挑戦だった」と中務。「でも自分のダンスを表現できるチャンスだと思ってオファーを受けた」と言うと、SAYA YAMAMARUは「男だねぇ」と感心する。さらに中務の印象について「第一印象は怖かったけど、知ったら人間力があってこんな謙虚な人はいない」と絶賛。そして「タレントさんがリーダーになってD.LEAGUERを連れてバトルに参加するのは相当勇気がいること。でも裕太くんはリハのときも文句ひとつ言ってなかった」と続けると、中務は「文句言う時間がもったいない。やるしかないから」とまたまた男前発言。そんな中務から見たSAYA YAMAMARUのダンスの魅力は“深さ”で、「動き一つひとつに意味がある」とのこと。その言葉を裏付けるように、ふたりのコラボレーションは極上のラブストーリーを見ているよう。光と陰のごとくピタリと呼吸を合わせ、しなやかに軽やかに溶け合いひとつになっていく。そのグルーヴに観る側も身を委ね、ドープな世界観に引き込まれていく感覚が心地良い。中務も「SAYAさんは僕の新しい一面を引き出してくれる。また一緒にやりたいです」「最高でした」と満足げに語った。
次に登場したのは“朝の9時から踊っていた戦友”のダンスアーティストグループ・GANMI。この日はメンバーがひとり欠席しており10人だったが、中務と陣を合わせた12人のメンズたちでステージ上はにわかに“わちゃわちゃ”した男くさい雰囲気に。GANMIとは3年前にABEMAで行った番組『GENERATIONS 24時間テレビ 24時間いろんなライブできるかなぁ?』の中で、ともに長丁場をやりきったまさに戦友同士。「一緒に踊っていてすごく気持ち良くて、またオファーさせてもらった」と話す中務に、GANMIのメンバーも「裕太くんのダンスに対する集中力にリスペクト」「人柄が好き。久々に会っても和やかにしてくれる」と再会を喜び、セッション準備は上々だ。ちなみにGANMIと踊ると「普段やらない構成で人数が多いぶん、安心感がある。10人に囲まれてめちゃ強くなった気がします」とうれしそうな中務。その一方で「でもGANMIのコレオは激ムズ。練習中は25年ダンスやってきて2,3回しかないけど、心が折れそうになった」とめずらしく弱音も(笑)。だがステージに立つ中務に、死角は一切なし。音楽が流れると舞台が暗転し、わずかな光が点滅するなか踊り始めた10人構成のGANMIに、中務が11人目のメンバーとして“ラスボス感”たっぷりにジョイント。中盤はシェイクのフリースタイルを繰り出すソロパートなど、がっつり見せ場を作り、さらに見応え満点だったのは11人のフォーメーションダンス。クライマックスに向かってぐんぐんスピードアップしながら動きもリズムも高速で刻み、音楽が止まりSEのみで踊るフィニッシュはスタイリッシュの極み。終わった瞬間息を詰めて魅入っていたことに気付き、思わず感嘆のため息が漏れた。「今日は(メンバーが)ひとりいなかったから、裕太くんが入っても他者感がまったくなかった」とGANMIのメンバーが言うと、中務も「僕も好きなスタイルなので気持ち良かった。モテるダンスですね(笑)」とコメント。確かにこんなダンスを見せられたら一発でホレてしまいそう(笑)。
最後のプログラムゲストはZINとYOUの2人組ユニットHilty&BoschとGOGO BROTHERSのREI&YUU兄弟。Hilty&Boschは中務が高校生のときに初めて行ったダンススクールの師匠であり、中務の“エピソード0”を知る貴重な存在。陣が「中務少年はどんな子でした?」と聞くと「メチャクチャ目立ってた」(ZIN)と当時を振り返る。「今はこんなにでっかくなったけど、当時は身体が小さくて僕らは“チビ裕太”って言っていました。しかもいきなりアクロバットして頭を打ったり、めちゃめちゃ“無茶しい”(笑)。スーパーキッズの先駆けだったんですよね」とエモいエピソードが飛び出す。一方、GOGO BROTHERSのふたりはロックダンスを作った伝説のダンサー・TONY GOGOの息子で、彼らもまたロックダンス界の頂点に立つレジェンド。そんな豪華メンバーとの競演が実現したのも中務のダンス交流の幅広さゆえだろう。ちなみにロックダンスは「鍵をかけるって意味のダンスで、動きが決まっているからいちばん難しいジャンル」とのこと。ステージ前半は5人が一糸乱れぬ高速ステップで畳み掛けるエクストリームなアクトを連打。後半は次々とポジションを変えながらソロパフォーマンスへとスイッチし、それぞれ高難度のスキルを炸裂させる。最後は大人の余裕とカッコ良さを見せる貫禄たっぷりのステージングで魅了し、終わった瞬間拍手喝采。会場中がスタンディングオベーションでレジェンドの技を称え、中務も「ダンサーとして本当に幸せ。人生の財産。最高です」と高揚を隠せない。「でも振りを間違えた!」と悔しそうな顔でしっかりオチをつけ、セッションプログラムを終えた。
しかし、今公演の真のハイライトはここから。再登場した中務は「今回は『マルチダンス』を通して皆さんに僕のルーツをお届けしました」と自分の気持ちを綴った手紙を読み始める。そこで語られたのはリスクを背負い、プレッシャーを感じながらテレビ番組のダンスバトルに挑み敗れた悔しさ、審査方法への疑問、結果を出せない苦しみなどメディアでは言えない、でも無骨に真摯にダンスと向き合ってきたダンサー・中務裕太の知られざる本音。「なぜダンスでこんなに苦しまなくてはならないのか、めちゃめちゃ悩んで苦しんだ」「ダンスの本当の歴史を知らない人に言われる言葉に心をえぐられた」「もうダンスを楽しめないかもしれない。そんな自分がいた」……と、これまで一切語られたなかった苦悩に満ちた言葉は重く、会場は水を打ったように静まり返る。だが「今回集まってくれたゲストの皆さんは純粋にダンスを愛し、音楽を愛し、楽しんでいる。そんな最高のダンサーと出会い、一緒に踊ることでパワーをもらい、ダンスの楽しさを思い出せた」と葛藤の末の心情の変化を語る。そして「僕はまだまだあきらめません。僕のダンスが好きだと言ってくれる人がひとりでもいる限り、踊り続けます。すべてのダンサーにリスペクトを込めて」と振り切った表情ですべてを出し切った中務。そのすがすがしい姿に、この日一番の熱い拍手が送られた。
そんな感動の場面から一転、フィナーレはゲスト総出演のサイファータイムへ。それぞれが自由に想い想いに踊るステージはルールなしのストリート状態で、ナビゲーターの陣もキレキレのダンスで参戦。中務がこの日何度も口にしてきた「本物のダンスを見てほしい」という言葉を観客に向け、解き放たれたように身体を動かしていく。事前インタビューで「ダンスを知らなくてもいい。純粋な気持ちで見てもらったほうが楽しんでもらえる」と言っていたが、確かに中務の踊りはダンスの知識があってもなくても「踊りたい」という根元の欲求を想起させるプリミティブなエネルギーが宿っている。その姿に、ふと在りし日の“チビ裕太”が重なり、ダンサー・中務裕太の原点が垣間見えた気がした。
Photography_塩崎亨
Text_若松正子
EXILE TRIBE MAGAZINEに掲載している事前インタビュー(2025.4.14公開)の中で、「ソロなので何も隠すことがない」「自分のありのままが出ている」と話していた中務だが、レジェンド級のゲスト陣を迎えたパフォーマンスは、ダンサー・中務裕太の「ありのまま」のレベルの高さを見せつけるラインナップ。
なぜここまで高みを目指し続けるのか。その問いに応えるように、今公演で初めて明かした胸の内とともに自身のルーツをたどった貴重なステージをレポートする。
「兄貴、オープニングからかっ飛んでます!!」
ナビゲーターを務めた陣(THE RAMPAGE)が思わず興奮するほど圧巻のソロダンスでスタートした『中務裕太のマルチダンス〜多次元裕太をお見せします 2025〜』。踊り終えた中務が「(ソロダンスが)長いっす」と息を切らすと、すかさず陣が「バテてどうするんですか!」と爆速でツッコミを入れるトークも安定のやりとりで、渾身のパフォーマンスに圧倒された観客の緊張をほぐしていく。中務が幕開けからトップギアで飛ばすのは、今公演で果たしたかった“原点回帰”、さらに裏テーマである“戦い”のあらわれ。「普段は見せられない本物のダンスで感動させたい」、そう語る決意の言葉に期待値が跳ね上がっていく。
プログラムは中務がオファーした3組のダンサーとそれぞれセッションする3つのラインナップで構成され、最初のゲストはSAYA YAMAMARU。ふたりの交流は2024年に放映されたストリートダンスバトル番組『R4 STREET DANCE』以来で、SAYA YAMAMARUが審査員、中務がD.LEAGUERとクルーを組んだ出場者として出会ったのが始まり。SAYA YAMAMARUが「あの番組は大変だったよね」と話を振ると「僕にとっては勝って当然、負けたら『あの人そんなもん』って思われる、メリットよりリスクのほうが大きい挑戦だった」と中務。「でも自分のダンスを表現できるチャンスだと思ってオファーを受けた」と言うと、SAYA YAMAMARUは「男だねぇ」と感心する。さらに中務の印象について「第一印象は怖かったけど、知ったら人間力があってこんな謙虚な人はいない」と絶賛。そして「タレントさんがリーダーになってD.LEAGUERを連れてバトルに参加するのは相当勇気がいること。でも裕太くんはリハのときも文句ひとつ言ってなかった」と続けると、中務は「文句言う時間がもったいない。やるしかないから」とまたまた男前発言。そんな中務から見たSAYA YAMAMARUのダンスの魅力は“深さ”で、「動き一つひとつに意味がある」とのこと。その言葉を裏付けるように、ふたりのコラボレーションは極上のラブストーリーを見ているよう。光と陰のごとくピタリと呼吸を合わせ、しなやかに軽やかに溶け合いひとつになっていく。そのグルーヴに観る側も身を委ね、ドープな世界観に引き込まれていく感覚が心地良い。中務も「SAYAさんは僕の新しい一面を引き出してくれる。また一緒にやりたいです」「最高でした」と満足げに語った。
次に登場したのは“朝の9時から踊っていた戦友”のダンスアーティストグループ・GANMI。この日はメンバーがひとり欠席しており10人だったが、中務と陣を合わせた12人のメンズたちでステージ上はにわかに“わちゃわちゃ”した男くさい雰囲気に。GANMIとは3年前にABEMAで行った番組『GENERATIONS 24時間テレビ 24時間いろんなライブできるかなぁ?』の中で、ともに長丁場をやりきったまさに戦友同士。「一緒に踊っていてすごく気持ち良くて、またオファーさせてもらった」と話す中務に、GANMIのメンバーも「裕太くんのダンスに対する集中力にリスペクト」「人柄が好き。久々に会っても和やかにしてくれる」と再会を喜び、セッション準備は上々だ。ちなみにGANMIと踊ると「普段やらない構成で人数が多いぶん、安心感がある。10人に囲まれてめちゃ強くなった気がします」とうれしそうな中務。その一方で「でもGANMIのコレオは激ムズ。練習中は25年ダンスやってきて2,3回しかないけど、心が折れそうになった」とめずらしく弱音も(笑)。だがステージに立つ中務に、死角は一切なし。音楽が流れると舞台が暗転し、わずかな光が点滅するなか踊り始めた10人構成のGANMIに、中務が11人目のメンバーとして“ラスボス感”たっぷりにジョイント。中盤はシェイクのフリースタイルを繰り出すソロパートなど、がっつり見せ場を作り、さらに見応え満点だったのは11人のフォーメーションダンス。クライマックスに向かってぐんぐんスピードアップしながら動きもリズムも高速で刻み、音楽が止まりSEのみで踊るフィニッシュはスタイリッシュの極み。終わった瞬間息を詰めて魅入っていたことに気付き、思わず感嘆のため息が漏れた。「今日は(メンバーが)ひとりいなかったから、裕太くんが入っても他者感がまったくなかった」とGANMIのメンバーが言うと、中務も「僕も好きなスタイルなので気持ち良かった。モテるダンスですね(笑)」とコメント。確かにこんなダンスを見せられたら一発でホレてしまいそう(笑)。
最後のプログラムゲストはZINとYOUの2人組ユニットHilty&BoschとGOGO BROTHERSのREI&YUU兄弟。Hilty&Boschは中務が高校生のときに初めて行ったダンススクールの師匠であり、中務の“エピソード0”を知る貴重な存在。陣が「中務少年はどんな子でした?」と聞くと「メチャクチャ目立ってた」(ZIN)と当時を振り返る。「今はこんなにでっかくなったけど、当時は身体が小さくて僕らは“チビ裕太”って言っていました。しかもいきなりアクロバットして頭を打ったり、めちゃめちゃ“無茶しい”(笑)。スーパーキッズの先駆けだったんですよね」とエモいエピソードが飛び出す。一方、GOGO BROTHERSのふたりはロックダンスを作った伝説のダンサー・TONY GOGOの息子で、彼らもまたロックダンス界の頂点に立つレジェンド。そんな豪華メンバーとの競演が実現したのも中務のダンス交流の幅広さゆえだろう。ちなみにロックダンスは「鍵をかけるって意味のダンスで、動きが決まっているからいちばん難しいジャンル」とのこと。ステージ前半は5人が一糸乱れぬ高速ステップで畳み掛けるエクストリームなアクトを連打。後半は次々とポジションを変えながらソロパフォーマンスへとスイッチし、それぞれ高難度のスキルを炸裂させる。最後は大人の余裕とカッコ良さを見せる貫禄たっぷりのステージングで魅了し、終わった瞬間拍手喝采。会場中がスタンディングオベーションでレジェンドの技を称え、中務も「ダンサーとして本当に幸せ。人生の財産。最高です」と高揚を隠せない。「でも振りを間違えた!」と悔しそうな顔でしっかりオチをつけ、セッションプログラムを終えた。
しかし、今公演の真のハイライトはここから。再登場した中務は「今回は『マルチダンス』を通して皆さんに僕のルーツをお届けしました」と自分の気持ちを綴った手紙を読み始める。そこで語られたのはリスクを背負い、プレッシャーを感じながらテレビ番組のダンスバトルに挑み敗れた悔しさ、審査方法への疑問、結果を出せない苦しみなどメディアでは言えない、でも無骨に真摯にダンスと向き合ってきたダンサー・中務裕太の知られざる本音。「なぜダンスでこんなに苦しまなくてはならないのか、めちゃめちゃ悩んで苦しんだ」「ダンスの本当の歴史を知らない人に言われる言葉に心をえぐられた」「もうダンスを楽しめないかもしれない。そんな自分がいた」……と、これまで一切語られたなかった苦悩に満ちた言葉は重く、会場は水を打ったように静まり返る。だが「今回集まってくれたゲストの皆さんは純粋にダンスを愛し、音楽を愛し、楽しんでいる。そんな最高のダンサーと出会い、一緒に踊ることでパワーをもらい、ダンスの楽しさを思い出せた」と葛藤の末の心情の変化を語る。そして「僕はまだまだあきらめません。僕のダンスが好きだと言ってくれる人がひとりでもいる限り、踊り続けます。すべてのダンサーにリスペクトを込めて」と振り切った表情ですべてを出し切った中務。そのすがすがしい姿に、この日一番の熱い拍手が送られた。
そんな感動の場面から一転、フィナーレはゲスト総出演のサイファータイムへ。それぞれが自由に想い想いに踊るステージはルールなしのストリート状態で、ナビゲーターの陣もキレキレのダンスで参戦。中務がこの日何度も口にしてきた「本物のダンスを見てほしい」という言葉を観客に向け、解き放たれたように身体を動かしていく。事前インタビューで「ダンスを知らなくてもいい。純粋な気持ちで見てもらったほうが楽しんでもらえる」と言っていたが、確かに中務の踊りはダンスの知識があってもなくても「踊りたい」という根元の欲求を想起させるプリミティブなエネルギーが宿っている。その姿に、ふと在りし日の“チビ裕太”が重なり、ダンサー・中務裕太の原点が垣間見えた気がした。
Photography_塩崎亨
Text_若松正子
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