2025.6.30

ピーター・パン
山﨑玲奈×山口乃々華

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この夏、山口乃々華が今年で45年目を迎えるブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』にウェンディ役で出演する。5月3日には公演に先立ち都市型フェスティバル『Hibiya Festival 2025』でピーター・パン役の山﨑玲奈さんと共演し、歌とお芝居、トークなどのスペシャルパフォーマンスを披露した。イベント直後、大役を果たしたばかりの山﨑さんと山口にインタビューを行うと「ちゃんと話したのは今日が初めて」と言いながらも、テンション高めのガールズトークが止まらず相性抜群だったふたり。互いの印象や公演の見どころ、本作恒例の“フライング”の魅力など、舞台への期待値がさらに高まる“ピーター・パン対談”を聞かせてくれた。


イベントのツーショットトークでは山﨑さんがMCも担当されていましたね。



山﨑玲奈(以下山﨑):もう大変で……びっくりでした(笑)。

山口乃々華(以下山口):あっという間に終わってしまったけど、私はすごく楽しかったです。

山﨑:でも、ちゃんとお話しするのは今日が初めて。山口さんはとても優しく温かくてすごく話しやすかったです。

山口:ありがとうございます。玲奈ちゃんとは10歳近く年が違うんですけど、しっかりしているし、歌も本当に素敵だし、びっくりしちゃいました。

それぞれ会う前と、会ったあとの印象は変わりましたか?



山口:私は前回の『ピーター・パン』の舞台を観たのですが、玲奈ちゃんの印象はそのときから全然変わっていないです。明るくて元気で裏表がなくて、まっすぐな感じは実際に会ってもそのまま。だからこれから新たな面を発見するのが楽しみなんですけど、とりあえず今日のトークで苦手な食べものが魚介類ということがわかりました(笑)。

山﨑:残念ながら食べられないんです……。アレルギーや嫌な思い出があるわけじゃないんですけど。

山口:海には入れるの?

山﨑:海は大好きです。

山口:塩の味が苦手なわけじゃないんだ?

山﨑:たぶん生臭い感じが無理なんです。でも、海の中にいるときはまだ新鮮だから大丈夫。

かわいい会話ですね。山﨑さんから見た山口さんの印象は?



山﨑:私が山口さんを初めて見たのはミュージカル『SPY×FAMILY』だったので、フィオナのイメージが私の中に染みついていまして。落ち着いたクールな女性という印象だったのですが、お会いしたらふんわりしていて真逆な感じで。今日のトークでもすごく話しかけてくださいましたし、こんなに明るい方なんだなぁってメチャクチャ癒されました。

山口:私から見るとステージの玲奈ちゃんは堂々としていて引っ張る力がすごいんです。一緒に歌ったりお芝居をしても「こっちの道ですよ」ってぐいぐい持っていってくれる感じがたくましくて素敵だなって思いました。

山﨑:ありがとうございます。

そこはやはり座長としての存在感ですよね。山﨑さんは今年で3度目の『ピーター・パン』となりますが、今回はどんな舞台にしていきたいと思っていますか?



山﨑:今年に入ってから演出家の長谷川寧さんとお話したとき、「これまでの『ピーター・パン』を払拭するくらいの勢いで新しいアプローチを考えてきてほしい」と言われまして。今度山口さんと一緒にワークショップもやらせていただくのですが、そのときも「今までと一緒のことをしたらダメだから」ということで、今回の舞台の台本ではなくあえて原作の台本でやることになっているんです。私のなかでもこの2年間に作り上げてきたピーター・パン像を壊すとなると、原作を読んで解釈を深めることはもちろんですが、新たな一面をもっと探っていかなければいけない。だから今回は『ピーター・パン』というものを改めて一から模索していく舞台になると思います。

これまで積み上げてきたものを壊して新たに作り直すのは大変な労力かと……。演出家さんもハードルの高い要求をしますね。



山﨑:寧さんは独自の世界観を持っていらっしゃる方。1年目も衝撃を受けましたし、2年目も新たなセットを用意して全然違う『ピーター・パン』にチャレンジして毎年毎年更新というよりはまったく違うものを求めていくんです。今回のイベントでも繊細で緻密なところまで私たちのパフォーマンスを作り上げてくださったのですが、寧さんの世界観を体現するのは本当に難しい。稽古期間がいくらあっても足りないなって思います。

山口さんは長谷川さんの演出は初ですが、ビジュアル撮影のときも指先ひとつまで細かい指示が入ったそうですね。



山口:「指先に天使がちょこんと乗っているように」みたいな、本当にいろいろな細かいご指導があったのですが、寧さんがそこまでこだわっていらっしゃるのは、そこにパワーが宿っていたり伝えたいものがあるからこそなんだろうなと。そのこだわりにできるだけついていきたいし、初めてでまっさらだからこそグングン吸収していければいいなと思っています。

今のところ、どんなウェンディ像を描いていますか?



山口:好奇心旺盛で前向き、かつチャレンジングな女の子ってイメージです。台本を読むと「〇〇だわ」とか日常的な会話というよりはセリフっぽい言い回しが多いのですが、ウェンディの力強さとか前向きな感じが乗っていくと語尾とかも変わってくるかもしれない。なので、セリフひとつひとつから細かい動きまで、稽古をしながら自分なりのウェンディを見つけていきたいです。ただ今はまだ稽古前なので正直何もわからない。もしかしたら想像とはまったく違うご指導があるかもしれないけど、新しい世界に行くのは好きなので楽しみです。

山﨑さんは毎年“新たなウェンディ”を迎えているわけですが、相手によってピーター・パンのアプローチも変わりますか?



山﨑:ウェンディとの掛け合いで物語が始まっていくので、ウェンディが変わるとスタートラインも変わり全然違うものになります。実際、1年目の岡部麟さんはすごくかわいらしくてキュートな“THE女の子”って感じのウェンディだったけど、2年目の鈴木梨央さんは挑戦的というか。「この人に負けたらダメだな」って思わせてくれるような存在の方だったのでピーター・パンの性格も違って見えた。山口さんはまた違ったものを持っている方だと思うので、お互いの個性がどういう風にぶつかり合っていくのかワクワクします。

山口:どんなウェンディになるんだろう……。私自身「こういう風に読み解きますよ」って自分なりの解釈は持っていくけれど、ガッチガチに譲らないってタイプでもないので玲奈ちゃんとやっていくなかでどんどん変わっていけばいいかなと。それにウェンディはどちらかというとセリフ的にも受け身のスタンスが多いよね。ピーター・パンがぐいぐい連れてってくれるみたいな。

山﨑:そうですね。

山口:なので玲奈ちゃんのパワーを感じながら、いっぱい受けて返していきたいなって思います。

『ピーター・パン』のミュージカルは今回で45年目になりますが、ここまで長く愛され続ける理由は何だと思いますか?



山口:観てきた側の私が思うのはやっぱり観るとスッキリしてリフレッシュできるところ。いろんな感覚や感情で、もやもやっとしているときも『ピーター・パン』を観に行くと「あぁ、楽しかった。よし、頑張ろう!」って前向きになれるというか。どの場面もワクワクするし、優しい世界ではあるけどある種の緊張感も漂っているから観ている間は本当に集中して世界観に完全に入り込める。そのぶん、終わったときは気持ちがクリアになっていて、持って帰れるものが全部ハッピーというところが一番の魅力だなって思っています。


山﨑:私は自分が演じて感じたのは世代によって受け止め方が違うというところです。私より年下の人や子どもたちはピーター・パンの世界を全力で楽しみ明るい気分で帰ってくれるけど、上の世代になるほどウェンディの気持ちになって「何でピーター・パンはわかってくれないんだろう」ってちょっと切ない気持ちになる方もいて。さらに私の親世代だと親目線になって観るから泣いてしまう方も多くて、世代によってこんなに感じ方が違う作品ってすごいなと。実は今ミュージカル『ビートルジュース』という舞台の稽古をやっているのですが、共演者のなかにも「ピーター・パンは悲しくなる」と言っている方もいて、あの結末をハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかも人によって真逆なんです。そういういろいろな捉え方ができるのもピーター・パンの大きな魅力だなと思います。

ピーター・パンの物語は「子ども時代の終わり」という側面もあって、誰もが通る道だからこそ幅広い世代に刺さるんですよね。



山﨑:ピーター・パンのセリフで「ウェンディ、君はもう大人になっちゃったからダメだよ」というのがあるんですけど、そこがいちばん辛くていたたまれないって方もいます。

ストーリーの奥深さに加えエンタメ的な見せ場が多いところも愛される理由だと思うのですが、演者として楽しみにしている演出はありますか?



山口:フライングは今から楽しみなんだけど、実際どんな感じなの?

山﨑:ジェットコースターに乗っている気分になれてめっちゃ楽しいです! 高いところが苦手な人にとっては恐怖だけど私は高いところが大好き症だから全然平気。風がくるし、速いし、すごく気持ちがいいですよ。しかも劇場が変わると速さも違います。一回、びっくりするぐらいすごく速い劇場もあってスリル満点でした(笑)。劇場の装置や位置の関係で速さや上下の感覚がバラバラで、それがまた楽しいんですよね。

山口:え〜、最近はジェットコースターもまったく乗ってないから大丈夫かな? 18歳ぐらいまでは平気だったけど、だんだん怖くなってきちゃってウェンディみたいに大人になっちゃったのかも(笑)。でも、楽しんで飛んでいる玲奈ちゃんや子どもたちの姿を見たら勇気をもらえる気がする。(ウェンディの弟の)ジョンとマイケルも一緒に飛ぶよね?

山﨑:でも、去年は高いところが苦手な子役の子が多くて、フライングは怖がってました。

山口:私も以前空中ブランコをやったときは泣きながらやってた。でも結局できたから、たぶんフライングも得意だと思うんだけど。

山﨑:絶対大丈夫です!

では、フライング以外の見どころは?



山﨑:寧さんの演出になってからパルクールの要素が増えて、セットからセットへ飛び移ったり、滑り台みたいなセットを駆け上がったりするので見どころは盛りだくさんです。そのほかにもアクションが激しいですし、本格的な殺陣もあってアクティブな作品になっているから、お子さんはもちろん大人の方も「すごい!」って気持ちで見られるかなと。ちなみにウェンディも結構激しく動きます。


山口:身体を動かすのは楽しみ。私はパフォーマー出身なのにソロになってからあまり踊ったことがないんだけど、今回は久々に踊れるのでうれしいです。あと、いつもステージがすごく派手なのでどんなビジュアルになるのかも楽しみです。

山﨑:めっちゃカラフルですよね。

山口:私が最初に『ピーター・パン』を観たのは2019年なんだけど、そのときは淡い絵本みたいな感じで。でも、2年前に玲奈ちゃんの舞台を観たらビビットで華やかな世界観になっていてガラッと印象が変わっていました。玲奈ちゃんもエネルギーもドーンと伝わってきて、「ああ、元気になった!」って感じだったんですよ。なので、あのパワーについていくためにも私も夏バテしないように頑張らないと。一生懸命、稽古をして玲奈ちゃんはじめ、皆さんと舞台を作り上げていきたいです。

これまでも山口さんの取材をさせてもらっていますが、今回はずっとやりたかった『ピーター・パン』ということでいつも以上に目が輝いているかも。ワクワク感が伝わってきます。



山口:今日のイベントもすごくドキドキしちゃって。やりたかったことがかなう瞬間ってアドレナリンがすごく出るんです。でも、まだウェンディにはなりきれていない。今日はまだ衣装も違うから、ウェンディの心で歌っているけど、外見はまだ山口乃々華でちぐはぐな感じです。それがこういうイベントの難しさですよね。

山﨑:でも、落ち着いていらして、特にトークのときは優しく包みこんでくださったので私は本当に話しやすかったです。稽古場でもテンションが上がって山口さんにすごく話しかけちゃうと思うんですけど……。

山口:いっぱいしゃべりたい! あと玲奈ちゃんの好きなものを持っていきたいと思っていて。さっきのトークで「好きなものは白米」って言っていたけど、どうやって白米持っていこうか? 

塩おにぎりとか?



山﨑:おにぎり大好きです!

山口:じゃあ、小さい炊飯器を持ちこんで、炊きたてごはんのおにぎりを。

山﨑:うれしい! ありがとうございます!

とても和むトークでずっと聞いていられます。では、最後に座長の山﨑さんからメッセージをお願いできますか?



山﨑:今年は去年よりもさらにキャストさんが一新しまして。山口さんもそうですし、フック船長役の石井一孝さん、タイガー・リリー役の七瀬恋彩さん、ダーリング夫人役の太田緑ロランスさんはもちろんアンサンブルの方たちもガラッと変わったので、それぞれの個性がぶつかり合う新たな作品になると思います。アプローチもこれまでとはまた違ったものになっているので、ぜひ一新されたネバーランドを観に来てください。

ちなみに公演が終わった瞬間、何という言葉が出たら成功だと思いますか?



山口:えー、何だろう?

山﨑:山﨑玲奈としてってことですよね? だったら、「楽しかった!」かな。心からそう言えたら大満足です。

山口:それに尽きるよね。「最高だった! またやりたい!」って思えたら大成功だと思います。

『Hibiya Festival 2025』Photo Gallery





STAGE information
青山メインランドファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』
日程/7月28日(月)〜8月6日(水)
会場/東京国際フォーラム ホールC
その他、群馬公演・大阪公演・福岡公演あり
料金/
・ネバーランドシート(妖精の粉付):おとな・こども 平日/土日共通¥10,000
・S席:
おとな 平日¥8,500/土日¥8,900
こども 平日¥6,500/土日¥6,900
・A席:
おとな 平日¥4,800/土日¥5,200
こども 平日¥3,200/土日¥3,600
キャスト/
ピーター・パン:山﨑玲奈
フック船長:石井一孝
ウェンディ:山口乃々華
タイガー・リリー:七瀬恋彩
ダーリング夫人:太田緑ロランス

ロストボーイズ:飯田汐音、小野寺夏音、梶 みなみ、富田明里、宮島優心(ORβIT)
パイレーツ:今村洋一、黒沼 亮、佐藤 大、七味まゆ味、武井雷俊、馬場礼可
モリビト:ASUKA、奥富夕渚、住 玲衣奈、高中梨生、堤 はんと、中川友里江、西垣秀隆、森田駿介
ジョン(Wキャスト):白石ひまり/三浦あかり
マイケル(Wキャスト):小林愛佳/柳生有咲
※以上五十音順
原作/サー・J・M・バリによる作品を元にしたミュージカル
作詞/キャロリン・リー
作曲/モリス(ムース)・チャーラップ
翻訳・訳詞/福田響志
演出・振付/長谷川 寧

音楽監督/宮川彬良
美術/BLANk R&D
照明/齋藤茂男
音響/井上正弘
衣裳/高橋 毅
ヘアメイク/河村陽子
アクション・パルクール/HAYATE
映像/anno lab
フライング/松藤和広
歌唱指導/福井小百合
パペット操演指導/黒谷 都
振付助手/溝上瑞季、仙石孝太朗
アクション・パルクール助手/ASUKA、大賀辰次朗
稽古ピアノ:浅野直子
演出助手/坂本聖子、玉置千砂子
舞台監督/小澤久明、瀧原寿子
エグゼクティブ・プロデューサー/堀 威夫
主催・企画制作/ホリプロ
特別協賛/青山メインランド
https://horipro-stage.jp/stage/peterpan/


photography_小池大介(小池大介写真事務所)
styling_宇賀愛[山﨑玲奈], 栗野多美子[山口乃々華]
hair&make_林田凛[山﨑玲奈], 永井友規[山口乃々華]
text_若松正子