2025.6.26

Times
PKCZ®︎

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約1年ぶりとなる新曲「Times feat. MA55IVE THE RAMPAGE」をリリースしたPKCZ®︎。MA55IVE THE RAMPAGEを客演に迎えた今作のジャンルは、“和製RAVE SOUND”で、ベースハウスを得意としているPKCZ®︎メンバーの白濱亜嵐が作曲し、爆音でこそ真価を発揮する、重厚かつ攻撃的なベースが特徴のクラブアンセムとなっている。インタビューでは、MA55IVEとの楽曲制作エピソードや7月からスタートする『PKCZ® DJ LIVE SHOW 2025 ~Times Changer~』についてたっぷりと語ってもらった。

昨年は約7年ぶりのアルバム『Put Your Hearts Up, Everybody Jump Up』をリリースし、全国を回る『PKCZ®感謝祭 2024〜Put Your Hearts Up, Everybody Jump Up〜』を開催しました。これまでにも増して精力的に活動した1年だったかと思いますが、いかがでしたか?


白濱亜嵐(以下白濱):改めて、LDHの中でも新しいチャレンジができるユニットだなと感じました。ほかのパフォーマンスグループだと、スケールとしてアリーナやドームで見せたいライヴになりますけど、PKCZ®は最大限、音を楽しめる場所としてライヴハウスでのライヴが成立させられる。それはLDH内でも新しいんじゃないかなって。

MAKIDAI:PKCZ®のもともとのあり方として、フィーチャリングをしたり、ゲストを招いたりしてお祭りっぽく大きく展開するというパターンが多かったんです。だけど、より濃く楽しめる場所としてのライヴハウスが『PKCZ®︎感謝祭 2024~Put Your Hearts Up, Everybody Jump Up~』では機能したというか。それを軸にして、後々またお祭りっぽいこともしていけたらと。自然な流れではありますが、優先順位として“音”が一番にあるというのがPKCZ®らしいのかなと。

DJ DARUMA:PKCZ®の音楽を聴いてくれている人たちって、必ずしもクラブミュージックリテラシーが高い人だけではないと思うんですよ。普段LDHの音楽を中心に聴いている人が多いと思うので。その中で、僕たちが普段のDJでやっている要素を多めに出しても、みんなついてきてくれている感覚があって。みんなが楽しみたがってくれているということがはっきりしたし、何よりライヴがたくさんできて良かったですね。

LDHのイベントにも多く出演されて、PKCZ®のノリ方を知ってもらうような活動をしているようにも感じました。


MAKIDAI:PKCZ®のライヴは、いわゆるフェスでやるような、みんなでジャンプしたり、手を振ったり、タオルを回したり、みんなと一緒になれるようなポイントに入れるようにしていて。そういうものを楽曲に入れてみようということでできたのが、前作の「Put Your Hearts Up, Everybody Jump Up」。それをライヴで体現できた1年だったのかなという感じはしますね。


白濱:PKCZ®のライヴって、DJブースひとつで戦っている。それだけで2時間楽しませるっていう、実はすごく難しいことをやっているんですけど、自分たちも難しく考えずに、お客さんも飽きさせることなくやれているって、僕、何気にすごいなと思うんですよね。しかもLDHのお客さんは、合間に演出が挟まっている“観るライヴ”に慣れている人が多いのに。結構ハードなことをしてるなって思います。

MAKIDAI:その中で亜嵐は歌ってDJもして踊って。ハードの極みだよね(笑)。

白濱:はい。パフォーマーとしてライヴをやるときと変わらないくらい汗かいています(笑)。

MAKIDAI:ミーグリのときにお客さんが話しているのが聞こえたんですけど、お客さんも「身体がおかしい」って言ってました(笑)。それくらいフィジカルにも訴えかけるライヴをしています。

身体がおかしくなるくらい踊ってもらうというのが、今のPKCZ®のやりたいことなんでしょうね。


白濱:まさしくそうですね。PKCZ®のライヴではアンダーグラウンドの雰囲気を感じてもらいつつ、LDHらしさも感じてもらえるのがおもしろいのかなと思います。

DJ DARUMA:クラブに対して怖いというイメージがある人もいると思うんですけど、実際は楽しいものだし、音楽にフォーカスした場もたくさんある。だから、そういう未知のリズムや音像に触れる機会がたまにはあってもいいのかなと。そのひとつがPKCZ®になれればと思っています。

そして、新曲「Times feat. MA55IVE THE RAMPAGE」がリリースされました。この曲は和製RAVE SOUNDで、MA55IVEとのコラボですが、楽曲のアイデアとしてはどこから始まったものなのでしょうか?


MAKIDAI:MA55IVEとコラボするという話から始まりました。コラボなので、「かける(×)」とか「クロス」といったアイデアを出し合って。

白濱:「『X』って書いて『テン』って読むっていうのもあるよね」って言われて、「それ、去年ジェネ(GENERATIONS)がやっちゃいました」とか。


MAKIDAI:その話し合いの中で、「One times one」で「1×1」という意味になるということを提案させてもらって。「Times」だったら「かける(×)」の意味もあるし、「時間」という意味で捉えても、“無限にある時間の中での2組の接点”という考え方もできていいねということになりました。

白濱:そこから「Times Changer」というテーマができました。PKCZ®にMA55IVEがフィーチャリングする曲と、MA55IVEがPKCZ®に参加する曲を出すということは決まっていたので、そこから「Times feat. MA55IVE THE RAMPAGE」と「Changer feat. PKCZ®」の2曲ができました。

「Times」のトラックはどのようなイメージで?


白濱:DARUMAさんから「あまり音を乗せすぎない、リリックも少なめなミニマルなテクノをベースにしたらどうか」というアイデアがあって。

DJ DARUMA:ちょっとまだ形容する言葉がはっきりしていないんですけど、僕はトランスやバウンステクノだと思っているものが今のクラブミュージックのトレンドのひとつになりつつあって。そういうサウンド感を入れるといいんじゃないかと亜嵐に伝えました。

白濱:だけどPKCZ®のファンは口ずさめるフレーズが好きなので、あまりミニマル過ぎてもなというところも踏まえて、トラックを組み立てていきました。

白濱さんからトラックが上がってきたとき、おふたりはどう感じました? 


DJ DARUMA:カッコいいなと思いました。特にビート感と音像、キックの質感が。僕、キックの質感にトレンドがすごく出ると思っているので、「ここはこういうキックの鳴りがいいんじゃないか」みたいなことを言ったんですよ。そしたら亜嵐がしっかり当ててきてくれました。

MAKIDAI:LDHのアーティストの楽曲で、このトラックで歌とかラップが入っているのはないと思うので、新しいと思ったし、かつフロアを沸かせられるようなパワーのある曲で、聴いてすぐに「これでいきたいです」となりました。みんなDJもやっているので、そこでかけられそうな曲かどうかがひとつの基準になるのですが、最初に上がってきた時点で「これだったらクラブでかけられる」と思いましたね。自分のDJでかけたいと思える曲を自分たちで出せているって幸せだなと。

全員がマイクを持つMA55IVEを迎え入れるのに、リリックも少なめにするというのはなかなかの難題だったと思うのですが、そこはどのように考えていたのでしょうか?


白濱:MA55IVE名義の「Changer」が歌もののダンスミュージックなんです。そのレコーディングのときの歌のフレーズをサンプリング的手法でできたのが「Times」の歌詞で。

MAKIDAI:最速のサンプリング的な感じです(笑)。そうすると、交わる点のリンク率が上がるじゃないですか。

白濱:でもリリースは「Times」のほうが先だから、「最速」っていうよりも追い越している(笑)。

なるほど! コラボであり、連動している2作であるわけですね。


MAKIDAI:コラボのやり方として、新しいアプローチをやりたかったんです。こういうコラボのやり方は新鮮でした。

DJ DARUMA:サンプリングという概念は昔からあることですけど、まだ出ていない曲の一部をサンプリングするのはおもしろいなと思って。

白濱:だからレコーディングのときに僕がスタジオに持っていったのはサウンドだけ。それからMA55IVEと、BBY NABEくんと一緒に「どういうフレーズがこの曲にハマるのかな」って、その場で考えて。レコーディング現場で「このフレーズちょうだい」って言って、録り直ししてもらった素材を家に持って帰って加工しました。


「Changer」のレコーディングのフレーズをもらってきたと。


白濱:そうです。この曲のBPMに歌い直したり、〈PKCZ It’s for life〉から始まるブロックはこの曲用にレコーディングしたりはしましたけど、基本的には「Changer」のフレーズですね。

MAKIDAI:ナベさん(BBY NABE)もその場で作る感じに慣れていて。そこもまたおもしろかったよね。

白濱:はい。サンプリング自体はダンスミュージックを作るときによく使う手法ですけど、歌をそうやって使うことはあまりなかったので、すごくいい経験になりました。“PKCZ®がRAVE SOUNDをやるとこうなる”という答えになったなと思います。

レコーディングも含めて、MA55IVEと一緒に楽曲制作をして改めて感じたMA55IVEの魅力や新たな一面はありますか?


DJ DARUMA:新たな一面ではないですけど、リファレンスで出してくる曲とかを見て、クラブカルチャーが好きな人たちなんだろうなというのはすごく感じましたね。

MAKIDAI:完成した曲を聴いて思ったのは、MA55IVEの5人のキャラが確立されているなということ。もともと個性が強いなとは思っていましたけど、今回の曲が仕上がってみて、改めて実際のキャラももちろん、声のキャラも違うなと感じて。「Changer」ではリリックの内容について「MA55IVEが言いたいこと10個あげてみたら」と提案させてもらったんですけど、その回答にも想いやキャラが表れていていいと思いました。「Changer」も本当にいいんですよ。リリックにはMA55IVEの意志が注入されていて、でもトラックはおしゃれで。また新鮮なMA55IVEが見られるんじゃないかな。

白濱:音楽が好きなメンバーが多いので、歌の乗せ方、声の乗せ方を掴むのがすごく早いなと思いました。MA55IVEは、僕がクラブでよく会うメンバーが多いんですよ(笑)。

MAKIDAI:僕がDJをやったイベントに、MA55IVEのメンバーが来たこともあります。しかも僕の出番が終わったあと(笑)。本当に、クラブで爆音を聴いて「イェーイ!」ってなるのが好きなんだろうなと思いました。


パフォーマーとしてご自身のグループはありつつ、それとは別に好きなことをやるユニットを持っている、という点ではMAKIDAIさん、亜嵐さんともリンクしていますしね。


白濱:そうですね。たぶんみんなずっとダンスをやっていて、チャンスがあれば音楽をやってみたいって思っていた人たちがやっているのがPKCZ®とMA55IVEなのかなって。それこそ、MA55IVEがヒップホップベースでやっているのは知っていたので、せっかくPKCZ®とやるならヒップホップベースというよりは、クラブミュージック、ダンスミュージックベースでやりたいなと思っていて。だから「Times」はBPMも普段あまりMA55IVEではやらないようなものだと思う。いいコラボレーションになったなと思います。

先ほど、RAVE SOUNDは世界のトレンドであるというお話もありましたが、PKCZ®が今RAVE SOUNDをやる意味としては、どのようなことを考えていますか?


DJ DARUMA:踊ってほしいっていうところが一番ですね。「踊ってほしい」と言っても、ヒップホップダンス的に踊ってほしいっていうことじゃなくて。

身を委ねるような。


DJ DARUMA:そう。僕、とにかく四つ打ちにあわせて踊るのが、ずっと、何十年も好きなんですけど、それをみんなに感じてほしい。四つ打ちにあわせて踊っていると、なんかひとつになってる感覚があるんですよ。その場にいる人とはもちろん、すべてとひとつになっている感覚があって。そこに到達したくて、みんな四つ打ちで踊っているんだろうなと思う。それをみんなにもちょっとでも味わってもらえたらなって。10年前くらいにEDMが大きなブームになりましたけど、あれで良かったなと思うのは、ダンスミュージック初心者の人たちに、ダンスミュージックの楽しみ方を教えられたこと。そこで楽しんだ人たちが、近年テクノやハウスにいっている。それと同じように、今、日本のポップスが好きな人たちに「こういう楽しみ方もあるんですよ」って提案するのがPKCZ®の役割だと思うし、それがやりたい。

白濱:あとは、単純にちょうどいいですよね。クラブミュージックの流行り的にもBPMが速くなっていって。


MAKIDAI:自分は最近クラブでもbpm150くらいが多くて、ピークはドラムンになっていくみたいなことが多くて。何でなんだろうね。

白濱:僕の読みですけど、コロナ禍にみんな家で曲を作るからチルが流行って。で、またフェスが復活してきて、世の中に音楽が定着した結果、BPMが速くなってきたのかなって。

MAKIDAI:より刺激を求めるようになったってことか。こういうアゲ曲が世界的にも増えてきたのも今回のヒントになったよね。

「Times」では、〈This my swag〉〈これが俺らのStyle〉と歌っていますが、PKCZ®というユニットは、LDH内、さらには音楽シーンにとって、どんな存在でありたいと思っていますか?


MAKIDAI:もともと、PKCZ®は360度対応できる核のようなものになれたらいいなと思っていて。たとえばGENERATIONSがライヴするときにPKCZ®のコーナーがあって、そこにGENERATIONS以外のEXILE TRIBEメンバーが来るのもアリになっている。それはすごくありがたいですし、それはたぶんPKCZ®の核があるからこそ。動くプラットフォームみたいなものになれたらいいなと思っています。逆に、自分たちのライヴのときは、動かずに、濃いめの自分たちのエキスを出すみたいな。歌って踊るんじゃなくて、DJだからできる表現で盛り上げられるのかが我々らしさなのかなって。

白濱:加入する前、外から見ていたときもPKCZ®には「なかなかチャレンジできないような音楽をやっていてカッコいいな」という漠然とした印象があって。実際に加入させてもらってからは表現の幅も広がったと思うので、そこへのチャレンジはし続けていきたいなと思っています。音だけじゃなく、ライヴでもおもしろいことができていると思うので、EXILE TRIBEが好きな方にはもちろん、エレクトロユニットとしてPKCZ®を好きになってくれる人が増えればいいなと思っていますね。そうすればお客さんもミックスしていくことができるんじゃないかな。

MAKIDAI:「お客さんもミックスしていく」! いいの出たね!

DJ DARUMA:「PKCZ®が出てくるとなんかアガるよね」みたいな感じのことでいいのかなと思っていて。もちろんたくさんの人が聴いてくれるようになったらうれしいですけど、チャートの上位を目指したいというのはちょっとおこがましくて言えないかなって。そことは戦い方が違うというか。売れるとか、規模感を上げることよりも自分たちがお届けするべきことをファーストプライオリティにしているので。

3人がやりたいことをやっているということが、PKCZ®のおもしろいところですもんね。


DJ DARUMA:そうですね。だけど、自分たちのやりたいことだけを100パーセントやっているかと言うと、それも違って。僕はPKCZ®でやっていることって、あくまでもポップスだと思うんですよ。ポップスの中で、クラブミュージックの濃度が濃いもの。あくまでもポップスというフィールドの中で、僕たちがおもしろいことを提案しているという感じです。


7月、8月には『PKCZ® DJ LIVE SHOW 2025 ~Times Changer~』がありますが、これはどんな内容になりそうですか?


白濱:2公演しかないのがもったいないくらいおもしろいショーになっていると思います。LDHのみならず幅広くダンスミュージックというものに触れられる機会になるんじゃないかな。

MAKIDAI:そうだね。感謝祭から引き続き「ありがとうございます」という気持ちを伝える、というのはライヴのスタンスとしてあるのですが、今回は既存の曲をマッシュアップして、クラブサウンドと混ぜて……という部分が多めになる予定なんです。とはいえ、ついてこられないようなことにはならないように、上手いこと調整しながらにはなるんですけど、今までのPKCZ®のライヴの中ではいちばんとばしている内容になるかなと。参加ポイントはたくさん作りつつ。

DJ DARUMA:ぴけし隊の皆さんは素直にリズムやビートの質感に反応してくれる方が多いので。とはいえ、MAKIDAIが言ったように、知らない曲ばかりを羅列すると、それはそれで置いていかれちゃうと思うので、今は絶賛そのバランスを調整中です。

白濱:前回を超える汗だくになるんじゃないかな。

MAKIDAI:そうだね。

DJ DARUMA:今の状態だと抜きどころがないんですよ。前回はまず30分間走り切ってもらうみたいな感じで、30分後にやっと、少し休憩するポイントがあるみたいな感じだったんですけど、今回は休憩ポイントがあるのかなって(笑)。

MAKIDAI:意外と走り切ったらいける説もあるんですけど(笑)。そこはちょっと調整しながら楽しい公演にできたらと思っています。



Digital Single
「Times feat. MA55IVE THE RAMPAGE」

配信中

▼STREAMING & DOWNLOAD
https://ldh.lnk.to/Timesfeat

LIVE information
『PKCZ® DJ LIVE SHOW 2025 〜Times Changer〜』

7/3(木) 渋谷・Spotify O-EAST(東京)
8/15(金) GORILLA HALL OSAKA(大阪)
https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/34911/

photography_河合克成(株式会社125)
text_小林千絵