2025.2.5

HERO
小野塚勇人

  • 劇団EXILE FC対象
  • 一部フリー
2月6日スタートのミュージカル『ヒーロー』の代役出演が決まり、現在猛スピードで稽古中の小野塚勇人。セリフはもちろん歌あり踊りあり、さらに未経験のギターもマスターしなくていけないというハードモードな“突貫稽古”だが、本人は「やるしかないでしょ」と覚悟を決めており、表情も明るい。むしろこの状況を活き活きと楽しんでいるフシもあり、改めて俳優・小野塚勇人の肝の太さ、プロ意識の高さを感じる。インタビューでは稽古の様子や作品の見どころ、小野塚らしい独特のヒーロー観を語ってくれた。


舞台本番2週間前に急遽代役をオファーされたそうですが、聞いたときはどう思いましたか?


連絡が来たとき、家でゲームをしていたのですが「これでニート生活が終わる」って思いました(笑)。そのころ、正月ボケがまだ続いていて“そろそろ人間じゃなくなるかもしれない……”ってくらいぼけーっとしていたんですよ。だから最初に稽古に入った日も身体が拒絶反応を起こしていて。いつもは「やるぞ」「やらなきゃいけない」って徐々に準備していくのに、いきなりだったから身体がびっくりしちゃったんでしょうね。精神的にも通常なら「そろそろ休みは終わりか」って稽古に向かってゆっくり切り替えていくけど、今回は寝ていたところを突然「はい、立って!」って起こされた状態だから、それは拒絶反応も出ますよね。

「拒絶反応」を具体的に言うと?


初日は“音入れ”といって、4時間くらいずっと自分がやる曲の楽譜を見ながら練習したんですけど、最後の1時間は集中力が切れて記憶がない(笑)。音を取りながらも「本当に覚えられんのかなぁ?」みたいな、どこか他人ごとでいる自分がいたんです。でも1日やったら「もうやるしかねぇ」って。グダグダ言っている時間もなかったので、パッと切り替えて「よし、覚えよう!」ってエンジンがかかりました。セリフはすぐ覚えられるので、まずは歌詞を入れようとしました。踊りも入れ込まなきゃいけないんだけど、とりあえず歌詞を覚えないと何もできないので歌詞をメインにして、そこから歌のリズムとテンポを入れるという感じで、自分のなかで効率よく棲み分けて覚えました。

ではいちばん大変だったのは歌詞ですか?


いや、ギターですね。ギターを弾かなきゃいけない役なので。でも演出の(上田)一豪さんに「下手でもいい」って言われたので気持ちが楽になりました。ギター経験はまったくのゼロだから最初は「無理です」ってお伝えしたのですが「大丈夫、キャラで見せるから」ということだったので、じゃあ何とかなるかって思いながら今も練習しています。


お聞きしていると腹が据わっているといいますか。いろんなことを短期間でやらなきゃいけないのにまったく焦ってないですよね?


焦ってもテンパるだけでいい作用はないので、普通に「できるでしょ」って思っています。まだミスもあるし、ふわっとしているところもあるけど、多少のことはツッコミで笑いに変えるしかないだろうみたいな。回数をこなしながら伸びていけばいいかなって楽観的に考えています。一豪さんからは「よくこの期間でここまで持ってきたね」って言ってもらえたので、ひとまず及第点は超えたかなと。ここからプラスαしていくにはやっぱり回数をやらないと見えてこないけど、とにかく今は舞台で見せられるところまではきたので一安心って感じですね。

「できるでしょ」って言えるのはすごいですし、頼もしいです。


そう言って自分を煽って言い聞かせているだけです(笑)。それに引き受けておいてテンパるって意味わかんないじゃないですか(笑)。時間がないのもわかったうえでやりますって言ったわけだから焦ってる場合じゃない。そんな暇もないですし。

稽古場はどんな雰囲気ですか?


共演者の方とは皆さん仲良くさせてもらっています。特にスーザン・シュミッティ役(主人公・ヒーローの同級生)の宮澤佐江ちゃんとしゃべっていて、馴染みすぎて「本当に(稽古に入って)1週間目?」って言われました(笑)。でき上がっているところにあとから入るのは大変だって聞きますけど、僕は全然余裕だったかも。馴染むコツとしては最初、全体の雰囲気を探りつつ、仲良くなれそうな人を見つけて話しかけていくみたいな感じ。僕、末っ子なのでそういう嗅覚は元々備わっているんです。だから陽キャと言われたら陽キャなんだろうなって自分でも思ったりします。

コミュニケーション能力が高いというか生きる力が強そう。いきなり海外で放り出されてもなんとかやっていけそうですね。


うち(LDH)の人間はみんなコミュニケーション力は高いですよ。でもいきなり海外はさすがにキツい。こう見えて意外と繊細なので、水とか食べ物が合わなかったり言語も苦手だし。まぁ、誰かに助けを求めるのは得意かもしれないけど。


小野塚さんが演じるカークもメチャクチャ陽キャですよね。主人公・ヒーローの従兄弟ですが、屈託を抱えたヒーローとは真逆の明るいキャラクター。小野塚さんが思うカークの魅力は?


見た目はチャラいですけどいいやつです。カークっていう存在がいるだけで周りが明るくなって空気が変わる。ムードメーカーだし強烈な個性があるから見応えのあるキャラクターだと思います。ただ観ている人は「この人はヤバいな」ってなるかもしれない(笑)。この舞台はキャラの薄い人がいなくて、主人公のヒーローをはじめちょっと変な人しか出てこないんだけど、そのなかでもカークは変。実際、ヒーローに「個性的なやつ」って紹介される場面もありますしね。

どんな風に「変」で「個性的」なのでしょうか?


なんて言ったらいいのか……マインドが全部、下(しも)で脳みそが下半身についているようなやつ(笑)。それを表している歌詞とかもあって、もはや獣というかオスっぽい“THE男子”なんですよね。でもそこが彼の気持ち良さであり、すべてオープンなところはヒーローにはできないことだったりする。しかも優しいから知れば知るほど愛着が湧いてくる役で、苦手だって感じる人もいるかもしれないけど結局笑って見ちゃうみたいな愛されキャラだと思います。

お得なキャラですね。


チャラチャラしているけど魅力的に映っちゃうから、なんだかんだ言ってモテちゃう。そういう意味ではプレイボーイです。

ストーリーはそんなカークやヒーローたちの青春物語。挫折や痛みを乗り越えていくヒーローの成長物語でもありますが、小野塚さん的に今作の魅力はどんなところだと思いますか?


本当にいい意味で軽く楽しくおもしろく観られるところが魅力です。アメリカの若者の日常をコメディっぽく、ミュージカルにして描いているので「一歩踏み出さなきゃ」というダイレクトな重たいテーマや強いメッセージというよりは「ちょっとやってみるのもありかも?」くらいの気持ちにさせてくれる作品だと思います。



STAGE information
ミュージカル『ヒーロー』
日程/2月6日(木)〜3月2日(日)
会場/日比谷シアタークリエ
料金/¥13,000(全席指定)
脚本/アーロン・ティーレン
作曲・作詞/マイケル・マーラー
翻訳・訳詞・演出/上田一豪

出演/
有澤樟太郎
山下リオ/青山なぎさ(Wキャスト)
寺西拓人/小野塚勇人(Wキャスト)
宮澤佐江
吉田日向/木村来士(Wキャスト)
佐藤正宏

田村良太 西郷豊
木暮真一郎 高倉理子 高橋莉瑚

製作/東宝
https://www.tohostage.com/hero/

photography_河合克成(株式会社125)
styling_大川好一
hair&make_有村美咲
text_若松正子

【衣装クレジット】
ANTOK

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