2024.10.11

バントマン
鈴木伸之

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鈴木伸之が主演を務める土ドラ『バントマン』。今作は中日ドラゴンズのホームランバッターとして名を馳せたが、相次ぐケガなどで戦力外通告を受けた元プロ野球選手・柳澤大翔が、ある人物との出会いをきっかけにホームラン精神から一転、“犠牲バント”の精神で、誰かのためチームのため尽くし、支えようと一生懸命に考える第2の人生を描いたベースボール・ヒューマンドラマだ。柳澤を演じる鈴木にドラマの見どころや共演者とのエピソード、さらに野球に対する熱い想いなどを語ってもらった。

土ドラ『バントマン』で主演を務められますが、オファーを受けたときはどんなお気持ちでしたか?


僕は小学1年生から中学2年生まで野球をやっていて、今までにも野球の作品に今まで出たことがあったのですが、プロ野球選手という設定はこのドラマが初めてでした。最初にお話をいただいたときは、自分に務まるかどうか不安な気持ちもありながら、まだ台本ができ上がっていなかったので、どんな感じになるのかすごくワクワクしていたのを覚えています。

実際に台本を読んでみた感想を教えてください。


僕の演じる柳澤大翔は、中日ドラゴンズの元プロ野球選手の設定なのですが、すごく野球愛、ドラゴンズ愛にあふれたキャラクターです。会話の中でいろんなものを野球に例えたり、おもしろいやりとりもたくさんあって、コミカルな要素もある作品だなと思いました。大翔は戦力外通告を受けて、普通の会社員になるのですが、そこでもすべて野球につながりながら物語が進んでいくので、そういうところは見たことのない作品なのかなと思いました。

柳澤大翔という人物像をどのように捉えていますか?


元々ドラフト1位でプロ野球選手になり、そこから初打席でホームランを打つのですが、そのあとに大スランプに陥ってしまい、戦力外通告を受けてしまうんです。それでも大翔は野球やドラゴンズがものすごく好きで、プロ野球選手に戻りたいという想いをずっと持ち続けながら、いろんな人たちと出会い、元々あったホームラン精神から犠牲バントの精神に変わっていきます。この作品はそんな大翔が成長していく過程を描いた物語でもあると思うんですけど、とにかくまっすぐで、熱い男で、純粋にすごいなと思いますね。自分のやっている仕事に対して、本当に好きだってことも赤裸々にしゃべるキャラクターでもありますし、大翔は33歳の設定なんですけど、33歳でもう一回プロ野球選手に戻ろうと思っていること自体、普通の人だとなかなかできないと思います。彼は真剣にプロ野球選手に戻って、ホームランを打ちたいということを常々しゃべっていて、そういうところはすごく人として人間味を感じるし、純粋に応援したいな、素敵な人物だなと僕自身思っています。

人の幸せのために犠牲になることに対してはどう捉えていますか?


大翔は一方通行なキャラクターで、一方的に自分の想いを吐き出して、結果相手にとってそれが「あ~こんな考え方もあったのか」「ここで頑張っていいんだ」と、意図せず相手を変えてしまうような人物だと僕は捉えています。誰かほかの人に対して犠牲になろうとか、幸せになってもらおうとは思ってなく、ただわがままに生きていた結果、周りの人が大翔の言ったことでうれしかったとか、こうなって良かったみたいなのが、このドラマの見どころのひとつでもあると思っていて。ブレずに暑苦しく、自分の想いをわがままにしゃべっていくキャラクターなのかなと思いながら演じています。

中日ドラゴンズの全面協力で、バンテリンドーム ナゴヤでも撮影が行われるなど、野球のシーンもたくさんあるそうですが、撮影にあたって準備したこと、役作りをするうえで心掛けたことはありましたか?


野球を辞めてからは、バットを振ったり、ボールを投げる機会があまりなかったのですが、大翔は元々ホームランバッターという設定なので、どうしたらホームランが打てるのか自分で研究したり、スイングしたり……。元プロ野球選手としてどう説得力を出したらいいのかなっていうのをすごく考えながら、隙さえあれば練習するようにしていました。

具体的にどのような練習をしていたんですか?


セットで、バッティングマシーンが置いてあるんです。プロの方が使用している木製の公式バットを使って打つんですけど、体力には結構自信があったのに、メチャクチャ重くて。あと、ボールを筒状のものに乗せて打つティーバッティングという機械も現場に置いてあるので、休みの時間とかはとにかくそれらを使って練習しています。そのおかげで、徐々に形になってきているのかなというところですね。

本作を機に久しぶりに野球に触れてみて、改めて感じたことはありましたか?


僕の小さいころの夢はプロ野球選手で、ケガをして辞めるまでずっと真剣にやっていたぶん、また違う機会で野球に触れるのは、なんだか申し訳ないといいますか、本当に本気でやっていたからこそ、あまりやりたくなかったという気持ちもありました。でも、演じる大翔がすごく野球が好きなキャラクターですし、初めてプロ野球の中日ドラゴンズのユニフォームを着させてもらって、今はドラゴンズの試合は毎試合チェックするほど、野球熱が再燃しています。

ちなみに野球少年だったころもよくホームランを打たれていたんですか?


結構バッティングは得意だったので、ホームランバッターとまでは言わないですけど、4番5番を打たせてもらって、時々ホームランを打つようなバッターではあったのかなと思います。でも、高校、大学、プロ野球となってくると、また全然世界が違ってくるので、ドラマとはいえ、真剣に取り組まないとそういう方たちに認めてもらえない作品になるのが嫌なので、今、できることを一生懸命やらせてもらっています。

倉科カナさんや坂東彌十郎さんなど、個性豊かなキャストさんが出演されていますが、共演者の方の印象や撮影中のエピソードがあれば教えてください。


倉科さんは約10年前の舞台以来の共演で、当時僕は19歳とかだったんですけど、先輩としてすごく優しく接していただいた記憶がありました。10年の時を経てこうしてまたご一緒させてもらうことになったのですが、当時とあまり変わった印象がなく、いつも明るく周りに気を遣いながら現場を盛り上げてくださっていますし、難しい野球用語もたくさん覚えて、それも楽しんで演じている様子がすごく印象的です。坂東彌十郎さんは今作で初めてご一緒させていただいたのですが、僕の中ではいろんなドラマにたくさん出られているので、歌舞伎俳優さんというイメージがあまりありませんでした。本作では大翔の会社の社長役として、大翔にいろいろ指導したりするシーンがあるんですけど、彌十郎さん演じる櫻田社長がバントをするシーンのときに、ト書きに“独特なバントの構え”と書いてあって。どんな感じで構えるのかな? と思っていたら、見えを切ったバントの構えで、もう歌舞伎の世界のまんまで、ものすごく印象的でした。

主役、座長として、撮影現場で意識していることはありますか?


僕自身、自分のことで一杯一杯なので、座長というよりは、いちキャストとしてどうやったら本当のプロ野球選手に見えるかというのを第一に考えて一生懸命撮影に取り組みました。また、作品の内容が上手くいかない人にフォーカスしているような台本で、大翔というキャラクター自体も全然上手くいってないので、何か諦めてしまった人や、何か挫折した人、プロ野球選手、もっといえばスポーツ選手とか、そういう人たちが見て響く作品にはしたいなというのはすごく考えています。

大翔は自分ではまだまだできると思っているなかで戦力外通告を受けてしまいますが、もし、ご自身が同じ状況になったとしたら、どんな行動をとると思いますか?


僕はその時点で諦めます。

すぐに別の道を探しますか?


そうですね。

深追いしないんですね。そのように普段もスパッと切り替えることができるタイプなんですか?


わりとそうかもしれないですね。

引きずったりもしない?


引きずらないですね。

ちなみに鈴木さん自身、これまで人生の大ピンチと言える場面はありましたか?


元々歌のオーディション受けたのがこの世界に入らせてもらったきっかけなのですが、オーディション自体は落ちてしまいました。当時17歳で、初めて前向きに将来の輪郭が見えたみたいな瞬間だったのに、それがかなわなかったので、そのときは挫折じゃないですけど、そういうところが今回のキャラクターと似ているのかなと思っています。大翔は櫻田社長に出会って人生が変わっていきますが、僕にとってその存在として思い浮かぶのはHIROさん。でも、変わったと言うほど、僕自身まだ活躍できていないので、今は頑張らないといけないなと思っています。もうちょっとそこが形になったら、またいろんな人の名前とか顔が浮かぶのかなと思いますね。

鈴木さん流のピンチを乗り越える方法はありますか?


今、絶賛撮影中なので、大翔にちょっと寄ってしまうかもしれないですけど、何よりも好きという気持ちがいろんなことを後押しすると思います。練習したり、データを調べたり……何か自分の好きなものに特化する。好きなこと以上に勝てるものはないと思うので、とにかく自分がやりたいこととか、なりたいものがあって、そこでもしもピンチが起きたり、何かあったとしたら、とにかくそれについてだけずっと考えるっていうことが乗り越える秘訣なんですかね、ちょっと僕もわからないですけど(苦笑)。大翔の言葉をたくさん台詞として覚えて掃き出していると、僕自身も本当に野球がすごく好きになった気持ちになってくるんですよ。僕は途中で諦めてしまったのですが、改めて野球に出会えて良かったなって今、思えているので、そこはこの役を通して変えてもらった気がします。

少年時代に野球を通じて学んだことや今の仕事に活かされていることはありますか?


礼儀や上下関係など、そういうところは野球から教えてもらったかなと思います。

大翔は野球愛にあふれていますが、鈴木さんが今、愛するもの(ハマっていること)は何ですか?


野球のブランクが10数年あったので、役作りのうえで、ホームランバッターだった大翔として説得力が出せるように、素振りをしたり、野球に携わっていることかもしれないですね。

最後にドラマの見どころ、EXILE TRIBE MAGAZINEの読者の方たちにメッセージをお願いします。


『バントマン』はドラマサイドから野球愛を世の中に投げるという新しい形の作品かなと思います。その中にもさまざまなストーリーがたくさんあるので、野球が好きな方はもちろんですが、野球と縁がない方にも楽しんでもらえるドラマになっていると思います。何かを諦めてしまったり、挫折した人に響くように、野球と真剣に向き合いながら演じていますので、毎週土曜日の夜に気楽に見ていただけたらうれしいです。そして、ケガなく最後まで全力で頑張りたいなと思います。

©東海テレビ FOD



DRAMA information
土ドラ『バントマン』
東海テレビ・フジテレビ系全国ネット
10月12日(土)スタート
毎週土曜日23時40分〜放送
出演/鈴木伸之、倉科カナ、坂東彌十郎 ほか
脚本/矢島弘一、富安美尋
演出/千葉行利、丸谷俊平
プロデュース/遠山圭介(東海テレビ)、馬場三輝(ケイファクトリー)
制作協力/ケイファクトリー
制作/東海テレビ、FOD


photography_野呂知功(TRIVAL)
styling_くしかわ とも
hair&make_髙橋 亮
prop styling _IZU
text_星野彩乃